<雑論>民主主義は永続しない / 1票いくら? / 長いものには巻かれろ

● 民主主義は永続しない

 「近朱者赤、近墨者黒」とは、中国の成語で、「朱に交われば赤くなり、墨に交われば黒くなる」という意味である。私はもはや民主主義体制下の政治家に関心を持たない。立派な人物もいるだろうが、基本システムに取り込まれている以上、その志も次第に希釈され、やがて消え、同化されてしまうのである。

 英国人歴史学者であり、コロンビア大学教授であるマーク・マゾワー氏は、「自由民主主義は比較的最近、複雑な状況下で生まれた現象に過ぎず、永続するとは考えにくい」と指摘している。今日の社会ではあらゆるものに「サステナブル(持続可能)」が求められているが、皮肉にも、民主主義こそ最も「サステナビリティ」が欠落しているのではないだろうか。

 「民主主義が永続する理由はない」と語るマゾワー氏によれば、歴史を紐解くと、民主主義が広がり定着した時代こそがむしろ例外的であり、永続が約束されたものではない。冷戦後に民主主義は多くの国で広まり、短期的には安定をもたらしたが、普遍的な有効性には限界があるという。

 今や多くの国で民主主義への信頼が揺らぎ、強力な指導者や権威主義的な体制が支持を集める状況は、民主主義の行き詰まりを示していると考えられる。新たな秩序は、従来の民主主義的な枠組みだけではなく、地域や文化に根差した多様な政治体制として現れるだろう。民主主義は、あくまで一つの政治的理念・形態として細々と存続するかもしれないが、絶対的な善でも唯一無二の存在にもなり得ない。

 中国の権威主義的な統治が、少なくとも経済成長と発展において中国を未曾有の高みに押し上げたことは、否定できない事実である。民主主義が必ず権威主義に勝るという主張は、こうした現実の前に蒼白無力に見える。民主主義は自らを省みるときが来ているのではないだろうか。

● 1票いくら?

 民主主義における投票制度には、見えるコストと見えないコストが存在する。

 まず、1票あたりの「見えるコスト」は、選挙に直接かかる経費を総投票数で割ることで算出される。通常、選挙費用には投票所の設営・運営費用や印刷物の作成費、選挙人員の人件費、技術関連費用などが含まれる。

 例えば、アメリカの大統領選挙においては郵便投票の増加なども影響し、1票あたり約10〜25ドルのコストがかかるとされている。日本の場合、1票あたり数百円から1000円程度であることが多い。これには投票所の準備費、投票用紙の印刷費、票の集計・管理にかかるスタッフの人件費が含まれる。

 次に、1票あたりのコストに含まれない「見えないコスト」としては、まず、政治献金とロビー活動がある。たとえばアメリカでは、選挙サイクルごとに数十億ドルものロビー活動費が流れ、実質的に1票あたり数十ドルから100ドル以上の影響が出ているとの見方もある。ロビー活動の資金は政策への影響力を強め、企業や団体が特定の利益を追求する手段として機能している。

 また、汚職や裏金も見えないコストの一部である。票の買収や影響力の行使を目的とした資金提供が行われることで、選挙の公正性が損なわれ、非公式な費用として膨れ上がる。激戦区や政治的に不安定な地域では、票の確保や特定の支持層への訴求のために非公表の資金が投入されることがあり、この影響で1票あたりにかかるコストが見えない形で増加している。

 さらに、利権の維持や取引も非公式なコストの要因である。選挙に当選した後、支援者やスポンサーとの約束を果たすためにインフラ事業や公共事業の受注が行われることがあり、この原資は税金から賄われている。こうした利権に基づく公共事業の割り当ては、表向きの選挙コストには計上されないが、実際には1票の背後に多額の非公式なコストが含まれている可能性がある。

 最後に、広告や広報活動も見えないコストの一環として考えられる。政党や候補者は選挙戦中に多額の広告費を費やし、特に近年ではソーシャルメディアを活用した選挙活動が増えている。このような広告やデジタルマーケティングにかかる費用も公式の選挙費用には含まれないが、1票あたりの実質的な費用を押し上げる要因となっている。

 日本でも、政治献金や一部の利権関係が選挙戦に影響を与えることがあり、これが1票あたりのコストの非公式な部分を占めている。特に経済界や支持団体の支援によって利害関係が生まれ、これが間接的に1票あたりの費用に影響を及ぼしている。

 さて、日本人の1票にいくらのコストがかかっているか。1万円以上はかかっているのではないだろうか。

● 長いものには巻かれろ

 「長いものには巻かれろ」という生き方は正しい。ただ「長そうなもの」ではなく、本当に「長いもの」に巻かれることだ。さらに「長いもの」に巻かれるために、自分がどんどん「短いもの」になってはいけない。自分はまず一所懸命延びて、なるべく「長いもの」になることが何より大切だ。「長いものには巻かれろ」は、手段であって、目的ではない!

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