中国経済も日本経済も、実態と実感のかい離どう解釈すべきか

 日本の消費市場は好調だ――。といったら、「何寝ぼけたこと言うんだ」と叱られるだろう。

 日本百貨店協会によると、14年の百貨店の高級時計、美術工芸品、宝石などのぜいたく品の売上高は3330億円に達した。12年の2780億円から20%増加。また、日本自動車輸入組合によると、1000万円以上の高級輸入車の販売台数は12年の9924台から14年には1万6198台と2年間で63%増加した(ブルームバーグ)。

 なるほど、要は富裕層市場が好況だ。格差拡大に起因する現れである。戦後一億総中流の消費市場に慣れた日本人の景気観から見れば、正常ではないし、全体的経済の好転とは決していえないものだ。どんな不況な市場でも、必ず儲かる業種や企業が存在する。日本より何倍もスケールの大きい中国の消費市場で見られるいわゆる格差に基づく繁盛という現象と実態経済(雲行きが怪しくなってきた現象)のかい離をどのように見るべきか、人それぞれの見方があるだろう。

 さらに、経済衰退(繁盛も)と実感のタイムラグ。日本のバブルは「1986年12月から1991年2月」となっているが、日本人が景気の良さを実感し出したのは1988年以降、また景気の衰退を実感し始めたのは1993年あたりだった。いずれも経済の変質と人間の実感に数年の時間差があることを示唆している。

 行動科学的にいえば、群集心理の理論もこれらの現象を裏付ける。シゲーレやル・ボン、あるいはマクドゥーガルの学説をまとめると、盲動性、衝動性、激高性、軽信性、被暗示性、偏狭性、付和雷同性などといった特性が示されている。経済学的な合理性とのかい離で諸現象の解釈を複雑化させることはしばしば見られる。

 そういう意味で、いまの中国経済はどの段階に来ているのか、これも人それぞれの見方があっていいと思う。

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コメント: 中国経済も日本経済も、実態と実感のかい離どう解釈すべきか

  1. マクドナルドの件は、マーケティングの話ではなく、消費者の嗜好拡大傾向の話でした。内食から外食への変化もそうですね。

    日本ではこうした消費の拡大につながる変化が終わってしまった後にバブルの崩壊を迎えたわけですが、中国では、変化と拡大が継続中ですから、こうしたものが経済の下支え効果をもつのではないかと考えた次第です。

    日本の富裕層が金を使うのは、株式等の資産が膨らんだ効果に過ぎないと考えられますが、中国の消費者のものは潜在的なマーケットの拡大ということで全く違う性質のものだと考えます。

    もう一つ、日本のバブル崩壊と中国の経済減速と異なる点があります。

    それはインターネットの普及です。インターネットの普及によって、いわゆるビッグデータの取り扱いが可能になりました。先日、立花先生が記事になされていた一号専車もそうですが、人の流れや消費能力がビックデータとしてはっきりと利用可能なものになっています。

    タクシーだけでなく、バスにもGPSがついています。これらの情報によって無駄のない大規模な投資が以前より容易になっていると考えます。タオバオなどのネットモールなどは、ほとんど全ての商品を網羅していますから、これらのデータによって需要を予測することは以前よりもはるかに容易になっているのではないでしょうか。

    中国に関しては、現代のゴーストタウンとしての無駄な投資ばかりがニュースになっていますが、実は、日本のバブル経済時期などより、ずっと効率的な投資が行われつつある可能性もあるのではないかと考える次第です。

    もちろん、消費の拡大やビッグデータの利用による効率的な投資が、中国のバブル崩壊をソフトランディングに導く助けになるほど大きな効果を発揮するかどうかは不明ですが。

    1. 柏木さん、消費者行動はまさにマーケティングの話だとは思いますが・・・。もちろんそこから全体経済への影響を検証するのも一つの方法論だと思います。ただ、一業態の消費者行動の変遷が成し得る経済への下支え効果がどのくらいあるか、それが経済全体の鈍化を緩和させるほどの効果があるかどうか、どのくらいあるか、いずれも緻密な数字と検証が必要でしょう(数万文字の論文書けるくらいの内容でしょうね)。さらにいうと、中国は完全市場経済ではないので、政治的要素の折り込みも欠かせません。いずれも、本記事の論旨射程が及びませんので、議論の展開をいたしません。どうかご了承ください。

  2. マクドナルド大盛況ネタの続きです。

    通常のマクドナルドとは別に高級志向のマックカフェというのがあるのはご存じだと思います。

    日本のマックカフェは、通常のマクドナルドと完全に独立させているか、フロアをある程度仕切ってマックカフェ専用のやや落ち着いた空間を生み出しているようです。

    しかし、中国のマックカフェは、カウンターや設備こそ別々であるものの、フロアは全く同じか、区別はあっても客は双方を自由に行き来できる状態で、マクドナルドとマックカフェの相違が食べ物、飲み物だけという状態になっているところがほとんどかと思います。

    そんな調子だから、多少コーヒーが美味しい(マックカフェはエスプレッソ方式)が、バカ高いだけのマックカフェでコーヒーを飲む客なんかいるわけもないはずでした。実際、昨年までは閑古鳥状態だったのです。ところが、今年に入ってから、じわじわと客が増え始め、けっこうな客がマックカフェで飲み物を注文する姿をみるようになりました。

    空間に対してではなく、食べ物や飲み物の目新しさにお金を出しているのではないかと想像します。(マクドナルドのレギュラーコーヒーは約10元、マックカフェのカプチーノが小12元、中19元、大23元です)。消費マーケットの変化を強く感じさせられる出来事でした。(深圳郊外の話です。市中心の繁華街では、マックカフェで普通に飲食する客が当初からけっこういましたので別の話です)。

    こういった潜在的な消費マーケットが中国にはあとどのくらい隠れているのだろう?と不思議に思います。

    1. 柏木さん、個別企業のマーケティング戦略を語る趣旨ではなかったので、このへんで失礼します。

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