「予想外」「未曽有」を死語に、中国の「新常態」に企業経営者は対応できているか

 やっぱりというか、予想通りの数字。中国が昨日発表した第1四半期のGDP伸び率は、前年同期比で7%だった。

 ちょうど1年前、友人でコンサルタントの水野真澄氏と中国のGDPについて議論があった。当時、目標値7.5%に対して7.4%成長と言う事実について、水野氏の「目標値に1%未達、まずまず高い伸び率で、景気減速とはいえないではないか、報道は『誘導的』『扇情的』だ」という見解に対し、私は真っ向から異論を唱えた。

 2014年4月28日付のブログ記事「水野氏とのGDP議論、中国経済は低迷か見解分かれる」を読むと、私はこう書いてあった――。「これ(水野氏との議論)についてやはり、事実検証に任せるしかない。半年後または1年後、経過を確認したうえで、短中期の中間まとめとしたいと思う」

 ちょうど1年経過した今日のこのデータ、少なくとも1年スパンの検証結果は明らかなものになった。中国自身もすでに成長の鈍化を「新常態」として位置付け、認めている。水野氏も私も相場師でもなければ、相場占いの賭けをしているわけでもない。勝ち負け云々語っても意味がない。私が頻繁に中国悲観論を持ち出す大きな理由は、悪い状況に備えてわれわれ企業経営におけるリスク対策はちゃんと出来ているかどうかにある。

 つまり、中国が言い方を変えて「新常態」と言っているのだが、われわれ企業はこの「新常態」に対応し得る、それぞれの「新常態対策」を整えたどうかである。企業には、外部環境耐性というのがある。中国経済に便乗して繁盛している商売なら、当然中国経済の状況につねに一喜一憂する。逆にこのような外部環境にあまり影響されない企業、不況に強い企業も存在する。

 「中国経済の低迷」や「不況」という言葉に敏感な方も多いだろうから、私も「新常態」と言い換えてもいい。だが、経営者にとっての課題はそれで変わるわけではない。中国の「新常態」が企業にとってあくまでも一種の「常態」なのか、あるいは「非常態」なのか、それは経営者それぞれ吟味することだ。

 最後に一言。中国の経済鈍化、市場低迷や異質性、あるいは反日といった政治的なイベントを、中国事業失敗の理由にする時代はもう終わった。悪い状況をすべて経営計画に折り込んで方針を立てるのが経営者だ。「予想外」や「未曽有」というような言葉は、経営者の辞書には存在しない。

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