中国が敵か安倍が敵か、「仮想敵理論」と安保法制

 「仮想敵」を作ることで対立側を含む他者を同一陣営に取り込むには有効な手段で、「仮想敵理論」は広範な普遍性を有している。

 昨今の安保法制もそうである。賛成派は中国の軍事的台頭や侵略リスクを取り上げ、中国を「仮想敵」とするのに対し、反対派は安倍政権が戦争を起こすのではないかと、安倍政権を「仮想敵」とした。そうした意味で手法的には類似している。

 問題の本質は、その「仮想敵」は果たして「仮想敵」かそれとも「本物敵」かだ。さらにいうと、たとえ現状が「仮想敵」であっても、それが静態的恒久的仮想敵であり続けるのか、それとも動態的変化によって「本物敵」に転化する可能性が潜んでいるのか、見極める必要がある。

 ここからは回答が多様化するだろう。中国が敵か、安倍政権が敵か。人によって答えが違ってくる。知りもしない南シナ海で中国が埋め立てをやっても何の関係あるのか、それよりも賃金が減っているのも失業するのも安倍政権のせいだ。だから、中国よりも安倍政権が俺様にとって敵だ。そう考えるのも無理はない。

 さて中国が敵か安倍が敵かで戦う日本国内を横目に冷笑する者は誰であろう。日本人自体も相互の「仮想敵」視で分断されていること、気付かないか。「戦争を起こしたのは為政者、日本人民には罪がない」。これ自体も「仮想敵理論」に基く分断戦略ではないか。

 政治がそうであるように、企業経営ないし家庭運営、交友関係まで実は「仮想敵理論」が広く、往々にして無意識に使われている。当事者自身が美辞麗句に洗脳されないように、いかに論理的に考え、理性でいられるか。そこが肝心だ。

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コメント: 中国が敵か安倍が敵か、「仮想敵理論」と安保法制

  1. 「動態的に当事者同士の利害関係が変化する。それが国際政治であって、また歴史そのものでもあります」と言うと聞こえがいいですね。

    環境破壊して、森林伐採して大儲けしました。植林は税金でお願い致します。環境破壊の結果、熱帯化が進んでいます。エアコン使ってください。人工食をたくさん売りました。アトピーは自分の責任で直してください。

    中国の労働資源を使って大儲けしました。結果、中国の軍事力も強大化しました。あとは、税金でこちらの国の軍事力も強化して対抗してください。戦争もやむ得ないですね。儲けた金は金持ちのものですけど、戦争に行くのは貧乏な人たちです。

    確かに世の中は理不尽なことに満ちていますね。

    1.  「世の理不尽」は聞こえが悪くても、善悪がどうであれ、事実です。そんな世の中に順応していき、自分や家族にとってのベストを見つけ出すか(自分を変える)、社会運動でも起こし世の中を変えていくか、あるいはどっちも変えずに文句や批判し続けていくか、それを決めるのが我々一人ひとりです。もちろんそれ以外に宗教に帰依したり、第四の選択を見つけるのも方法だと思います。

      1. 興味深い選択肢です。

        1)そんな(理不尽な)世の中に順応していき、自分や家族にとってのベストを見つけ出すか(自分を変える)
        2)社会運動でも起こし世の中を変えていく
        3)どっちも変えずに文句や批判し続けていく
        4)宗教に帰依したり、第四の選択を見つけるのも方法

        確かに、独裁国家なら、1~4の選択肢しかないのかもしれませんが、民主主義国家では少数派の意見も尊重され、主張の機会を与えられることになってますので、自分や家族にとってのベストを追及しつつ、文句や批判を続けても良いわけです。

        そもそも社会運動家だけで、社会家が変わるわけもなく、社会運動家を支持する人たちがいなけれ社会は変わりません。政治によって社会が変わっていくためには、理想を追求する政治家とそれを支持する人たちが必要でしょう。間違っているものは間違っていると言い続けることは大切です。社会運動家でなくとも。

        また、穏健な批判家がいてこそ、血をみることのない改善が可能なわけで、革命的活動のない批判は無意味だみたいな言い方は、民主主義を否定しているのと同じですね。

        1.  複数選択肢の併用ももちろんOKです。私個人的には不器用なので基本的に自己改革の選択肢1に専念しています。たまにガス抜き的な2もありますが、社会運動には興味がありません。余談ですが、会社勤めも同じですよ。会社に順応していくか、会社を変えるか、居酒屋で愚痴をこぼすか、旨い具合に複合選択的な運用か・・・ですね。

  2. 中国が仮想的と言えば、不思議なことがあります。

    中国はいつの間にこんなに強大な国になったのでしょう?世界の2大経済大国である日米が密接に協力しなければならないほどに。

    一党独裁の、民主主義とは明らかに異なる政治体制をもつ国にこれほどまでの力を与えたのは誰なんでしょう?

    中国を世界の工場とした、先進国の私たちです。先進国の資本主義が政治の不安を顧みず、利益追求のために、政治的な不安を無視して投資、開発を続けて中国を発展させました。

    そして今になって言います。中国は強大になり過ぎた。我がままになり過ぎた。力には力。さあ、大きくなりすぎた国を協力して抑えつけよう。

    滑稽な話ですよね。

    1.  日本が総額3.6兆円ものODAを中国に供与して・・・、本当に滑稽な話です。といっても、かつて戦争相手だったアメリカと日本やベトナム、そしてロシアと中国、なぜかくっ付いちゃうのです。だから本投稿にも言及しているように、動態的に当事者同士の利害関係が変化する。それが国際政治であって、また歴史そのものでもあります。

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