● 独裁・権威主義こそが世界の主流
西側諸国の人口は、世界の18%。この2割弱が世界の主流を自称する。これは自ら提唱する民主主義の多数決原則に反しているのではないか。さらに、民主主義国家の人口で見ても、その割合は、2017年の50％を頂点に下落し、2021年では世界人口のうち、29％に下がっている。
きっと厳しいデータがある。フリーダム・ハウスはアメリカに本部を置く国際NGO団体である。同国としては初の世界規模で自由を守るために活動する組織として知られている。同団体が発表した「Freedom in the World Report 2021」によると、現在完全に自由な国に住んでいるのは、世界人口のわずか5分の1未満となっている。
民主：独裁＝2：8。独裁・権威主義こそが世界の主流であり、民主主義は2割の少数にすぎない。民主主義の衰退が加速していることが明らかだ。なぜだろうか？
注目すべきは、2割弱の自由国家人口（いわゆる西側諸国国民）は、果たして本物の自由を享受しているのか、経済状態は改善しているのか、福祉が向上しているのかだ。答えは明らかに「NO」だ。特に自由国家の経済が軒並み後退している。これに対して中国をはじめとする権威主義国家は経済力を伸ばしてきた。シンガポールは世界トップクラスの富裕国家になった。なぜだろうか？
自由国家の企業が中国と盛んに商売をし、自由国家の富裕層は富を移動しシンガポールへ移住するのも、またなぜだろうか。
● 民主主義が権威主義に負けている
世界規模の民主主義の衰退は、その失敗があってこその結果である。民主主義は、権威主義に負けている。この事実をいまだに直視できずにいるのが、いわゆる自由国家の西側諸国だ。独裁・権威主義は、4000年以上にわたって人類史上の主流であり、今やルネサンス期を迎えようとしている。
中華圏の経済成長を見よ。台湾は、蒋家一族の権威主義で経済成長を遂げた。シンガポールは、リー家一族の権威主義で経済成長を遂げた。香港は、イギリス植民の権威主義で経済成長を遂げた。中国は、中国共産党の権威主義で経済成長を遂げた。その中の台湾だけが民主主義の導入で衰退の一途を辿った。
私は何らか結論らしきものを暗示するつもりはない。ただ社会科学的に政治体制と経済成長の相関関係をもっと研究したほうがいいのではないかと言っている。少なくとも、経済の自由化から政治の自由化へ、独裁から民主へという「進化論」説では、上記の事実を説明できないように思える。反証でさえある。
政治の自由化、名ばかりの米国流民主主義では、アメリカの収奪を利して自国経済・国力の衰退につながるだけ。欧州と日本、台湾、ロシア（ソ連）はその代表格。中国もシンガポールも、この本質を見抜き、米国流の民主主義に「NO」を突き付けた。少なくとも、経済発展という意味でこれが正しい。
● 反民主主義？
私自身も4段階の変化を経て今日に至った――。
2000年（35歳頃）までの私は、基本的に民主主義信者で権威主義を絶対悪としていた。2010年（45歳頃）までの私は、民主主義に疑問を持ち始めるが、それでも権威主義よりは善であることを信じていた。2020年（55歳頃）までの私は、民主主義の欠陥をはっきり認識し、民主主義を批判する一方で、権威主義との相対論比較を始めた。2020年以降の私は、反民主主義の姿勢を明確にし、権威主義の優越性をもって、二大主義の共存と競争を主張した。
40年の歳月、自分の加齢に伴う本質洞察力の深化と民主主義の加齢に伴う腐敗の進展という2つの要素があっての結果である。先人、ことにギリシャの哲人たちはなぜ民主主義に否定的だったのか、そして4000年以上の人類史上、なぜ独裁・権威主義体制が主流だったのか。私の結論は1つ――。民主主義は、単にカモフラージュを施した権威主義の変種に過ぎない。
民主主義に適した国（環境）とは？参加者全員が高度な知性と理性をもち、共同体利益を優先し、一般意思が機能することが求められている。しかし、それは理想にすぎない。
医師や弁護士、教授、科学者は、みんなスペシャリスト、有資格者。しかし、政治家だけは、素人から選ばれる。だから、民主主義の政治は、科学ではない。いや、ある意味で反知性的ともいえる。以前、私と某氏（たち）とはこんな会話があった――。
相手「立花さんの言論は、民主主義に対する攻撃だ」
立花「攻撃？民主主義は、私のような無名で一介の庶民の攻撃にも堪えられないほど脆弱なものか」
相手「民主主義それ自体は、否定できない」
立花「多様な価値観を認めるのは、民主主義。だが、反民主主義という価値観や観点だけは認められない。そういうことか？」
相手「？」
立花「民主主義への反論、反対意見を攻撃として封殺する。それでは、独裁・権威主義とどう違うのか？」
相手「あなたは屁理屈、口達者だから、議論は打ち切りだ」
だから、民主主義は、独裁・権威主義の変種だと私が言っている。
