「アメリカ」という仕組み、戦争をやり続ける理由はここにある

● 軍産複合体とワシントンDC族

 アメリカは建国からの250年に戦争をやっていないのは、何年だろうか。何年もない。アメリカという国の運営モデルは、戦争である。アメリカの基幹産業は、軍産複合体なのだ。

 軍産複合体は、戦争や紛争があればあるほど売り上げと利益が膨れ上がる。アメリカは毎年、直接の軍事費と関連費用を合算すれば、1兆5000億ドル(米経済学者ジェフリー・サックス教授試算)に上る。その天文学的な数字の利益は、ワシントンDC界隈の人たちとその家族や関係者にまで行き渡るが、アメリカの国家をますます貧しくしていく。

 アメリカはお金がない。米財務省が2024年1月2日に公表したデータによると、連邦政府の公的債務残高が初めて34兆ドルを超えたという。これだけの予算を投入して遂行した戦争から、アメリカは何を得たのだろうか。

● 戦争の勝ち負けが問題ではない

 アフガニスタンやイラク、シリア、リビアから、今進行中のウクライナ、ガザまで、アメリカは勝ったのだろうか。戦略目標を達成したのだろうか。これらの国々の人権や国民の生活が改善したのだろうか。ひいてはアメリカは豊かになったのだろうか。アメリカ国民は幸せになったのだろうか。答えはすべて、NOである。ワシントンDC族を除いては。

 アメリカが戦争をやった国々は、どこも産業が荒廃し、国土が焦土化し、内戦が絶えず、国民は死傷し、貧困のどん底に落ちた。イラクの大量破壊兵器開発で戦争を発動したところで、そんな兵器の1つも発見されずじまい。酷すぎる。アメリカのやってきたことは、米国民のためにも他国民のためにもならず、ワシントンDC族にのみ巨大な利益を注ぎ込んできた。

 サックス教授の試算によれば、米国民が2000年から約5兆ドルに上る損失を蒙ってきた。世帯に換算すると、1世帯あたり約4万ドル(約600万円)もの財産を失っている。一方、戦争が行われた中東や北アフリカの国々では、数百万人が死傷している。自然環境等の破壊は数兆ドルにも上る。

 1947年以来、CIA主導の下でクーデターや内戦、暗殺、選挙介入(不正選挙)、経済制裁ないし戦争を通して、アメリカは世界で少なくとも80以上の他国政権を倒した。これがアメリカいわく自由と民主の世界規模の普及なのだろう。

 これらのすべてはシンクタンク、大学、そして何よりもメディアのプロパガンダによって大衆の洗脳を行ってきた。これらの費用を受け取った教授や研究者、ジャーナリスト、論客たちは意図的にまたは無意識的に仕事をこなしてきた。社会のいわゆる識者・頭脳、メディアは神聖視されながらも、単なるワシントンDC族の下請け業者にすぎない。よくて国家企業の広報部といったところだろう。

● 代理戦争の仕組み

 ベトナム戦争まではアメリカは徴兵制を取っていた。アメリカ人が前線で戦って死傷していたが、これも大きく変わった。徴兵制をやめれば、中産階級や富裕層の子弟は兵役から解放され、兵士になるのは底辺の貧困層に限られるようになった。それでも米国人がいざ他国戦争で死傷すれば、国内で問題になるので、ついに戦争の実施も他国請負式に切り替え、つまり代理戦争になったのだ。

 他国の傀儡政権・政治家に代理費を払えば、彼らは簡単に戦争の実行を引き受けてくれるだろう。ゼレンスキーはその代表格であるように、もしやこれから台湾の頼清徳政権もそうなってくれるのかもしれない。外国人兵士が海外の地上戦で死んでいっても、その人数はアメリカの国内政治や選挙に何ら影響も与えないし、彼らの遺体はアーリントン国立墓地に埋葬することすらない。

 だから、アメリカは安心して戦争をいつまでもやり続けられる。

● 異端児トランプ

 この仕組みに初めてNOを突き付けたのは、トランプだった。彼いわくディープステート(DS)はつまりワシントンDC族のことであり、これらを一掃しようと試みたが、周知のとおり、トランプは異端児としてワシントンDC族に敵視され、排斥され、2000年の選挙に失敗した。

 トランプは商人であり、基本的に米国の国益を中心に計算し、余計な戦争をやらない主義だった。2024年の米大統領選挙で、トランプは舞い戻ることができれば、状況は少し変わるだろう。彼はどんなパフォーマンスを見せてくれるのだろうか。「アメリカ」という仕組みにどこまでメスを入れられるのだろうか。見守りたい。

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