南シナ海の中比関係悪化、マルコス大統領の人に言えない秘密

 民主主義国家の闇をもう1つお見せしよう。

 南シナ海では、中国とフィリピンの関係が悪化している。いよいよいつ武力衝突になってもおかしくない段階まで来てしまっている。そこで質問。マルコス大統領はドゥテルテ時代の親中政策から一転して反中親米に姿勢を急変させたのは、なぜ?

 マルコス氏は決して反中ではない。むしろ親中派である。氏は一貫して「中国は最大のパートナー」と繰り返し、就任後、中国が東南アジア以外では初の訪問先となった。習近平との会談では「中国との包括的戦略パートナーシップの新章を切り開きたい」と経済協力の深化を求め、農業やインフラ、金融、人的往来などの分野で多くの合意書を取り交わした。

 合理的な解釈(仮説)として考えられるのは、親中の姿勢を見せたマルコス氏に、アメリカがすぐに牽制を効かせたことだ。

 故フェルディナンド・マルコス大統領一家一族による不正蓄財は天文学的な数字だった。イメルダ・マルコス夫人が中心となって収集されたとされ、故マルコス大統領失脚の際にマラカニアン宮殿に残された宝石類や逃亡先のハワイで押収された宝石類は、氷山の一角に過ぎない。

 一部の未確認情報によれば、300億ドルに上るマルコス一族の不正蓄財はほぼ、アメリカ政府に押さえられている。「お金がほしければ、米国の言う通りにしろ」と、そんなマルコス氏はいやでも中国と戦わざるを得ない。

 民主主義国家であるアメリカとフィリピンの間に、こんな取引があっていいのか。不正蓄財ならば、米国政府は一刻も早くフィリピン国民に返還すべきだろう。なぜそれをせずにブラックマネーを取引材料にし、他国の政治に踏み入れるのか。口々に民主や自由を声高に唱えながらも、その裏は独裁専制政治そのものではないか。

 私が繰り返してきたように、独裁専制よりも、民主主義のカモフラージュを被った独裁専制のほうがよほど悪質である。

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