昔人已に白雲に乗じて去り、此の地空しく餘す黄鶴樓

 「外国人が出て行く「落ち目」の国際都市、上海 一時の隆盛はどこへ?人気の観光スポットも人はまばら」――。9月22日付の姫田さんのコラム。

 「昔人已に白雲に乗じて去り、此の地空しく餘す黄鶴樓」――。漢詩「黄鶴樓」(崔顥)の一節を思い出す。「物事人非、人去楼空」という諺もここから来ているのかもしれない。人が去っては物だけが昔のまま取り残される。「変化」と「不変」の鮮烈なコントラストで、世の無常を表すものだった。

 私自身も家族を含めて2013年という早い段階で上海からクアラルンプールへ移住し、いわゆる「早期退去組」の一員であった。上海時代私が住んでいた虹橋にある日本人住宅「アメリカンホームズ」も、われわれが退去してからわずか8か月後、全館閉鎖となった。

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 中国語で「故地重遊」といい、人間は昔時往んでいた土地を再訪するのも、「物事人非、人去楼空」というセンチメントを求めての確信犯なのだろうか。私も先日、上海出張中に旧居のアメリカンホームズに立ち寄った。門外から空楼をただひたすら眺め、昔時遊びに興じる子どもたちの歓声が今はいずこへ。残るは風に揺れ、鬱蒼たる木々の嗚咽のみ・・・。

 諸行無常。

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