在中日系企業の経営者にとって、「労働契約法」ほど怖いものはないだろう。施行してからの8年間、統計を見ても分かるように、労働紛争案件数がうなぎのぼりで増えてきた。
いよいよ本格的な改正に向けて走り出したようだ。
なぜ?中国経済が悪いからだ。中国の場合、労働法というのはある意味で経済のバロメーターである。経済が良くなると企業が儲かって、労働者により多く配分しろということで労働法が厳しくなる。逆に経済が低迷して多くの企業が経営難に直面していると、労働法も幾分企業に緩和運用してくれるかという期待がある。
労働法はこのように経済や経営と密接な関係があることで、私が中国で労働法の法学博士学位を取ったときも、論文のテーマは、「『労働契約法』無固定期間労働契約制度研究~公法介入と取引費用の視点から」だった。企業の「取引費用」という概念を労働契約法の研究に取り入れた。
いまはまさに、企業の取引コスト負担を考えて、この法律を少し変えないとダメじゃないかという時に差し掛かっている。
「労働契約法の改正だ」。今年2月19日に中国の楼継偉財政相が明言し、さらに1週間後のG20財務相・中央銀行総裁会議で、「・・・崖っぷちまであと1キロ。徹底的な構造改革しかない。これ以上もう待つ余裕がない」と、楼財務相が連呼した。
で、ここで企業として素直に喜んでいられるかというと、答えは残念ながら「ノー」だ。企業側に立っての労働法改正は即ち労働者側にとっての「改悪」になる。労働者は黙っていられない。当然抗議するだろう。多くの労働者が政府の法改正に反対すると、経済問題が今度、政治問題となる。だから、そう簡単ではない。
「労働契約法」を変えないとダメ。変えてもダメ。どうする?やっぱり変える。で、どう変えるか。たくさん変えるか、少し変えるか。うわべだけ変えるか、徹底的に変えるか。変えた場合、企業にとっての影響は何か。上手に変えてくれるといいが、下手に変えた場合はリスクが生まれる。企業はどう対応すればいいのか・・・。
そういう話をしようと、7月26日に上海で「労働契約法改正と企業人事労務政策対応セミナー」を開催する。法改正の予測、いくつかの仮説とシナリオを組み立てて分析し、企業経営側に対策の方向性を示したい。
● 背景と予測、政策の大転向はどのようなものか?
● 政府の姿勢、労働契約法の改正方向とは?
● 法改正が企業にどのような影響を与えるか?
● 解雇できるか?減給できるか?降格できるか?
● 法改正によって制度の柔軟性が果たして増えるか?
● 現行契約・制度と法改正後の新旧労働条件処遇格差とは?
● 地方立法権の拡大で各地の運用がバラバラになるか?
● 労働者に不利な法改正がもたらす副作用・リスクとは?
● 企業の人事労務政策の調整はどのようにすればいいか?
セミナー参加のお申込みは、こちら。