「お下げしてよろしいですか?」、肩に力が入る食事

 上海は連日40度を超える灼熱地獄。仕事を終えてホテルに戻り、シャワーを済ませると、もう出かける気になれない。夕食も館内で済ませようと・・・。

 料理をゆっくり一品ずつ食べていると、どうも気になることがある。その料理を最後の一口いただき、空となった皿をテーブルに下ろしたその瞬間、1秒も2秒も間を置くことなく、「お下げしてよろしいですか?」コールがかかるのだ。

 おっと、ちょっと待ってよ。いいですよと言いたくても、最後の一口を咀嚼中なので、言葉も出ない。そこまで何で焦るのか。多分研修で教え込まれていたのだろう――。空になった皿をすぐ下げるようにと。

 でも、タイミング。タイミングがあるんだろう。客が食べ終えて、ああ、美味しかったねとしばらく余韻に浸かって現実に戻ろうとするそのタイミングにあわせて、やさしく「お下げする」コールをする。

 いや、そこまで求めちゃいけない。求めすぎだ。研修で教えられたとおり、「早く下げる」を真面目に実践しているだけでも立派といえる。冷水をかけてはならない。

 と、思いつつ、次の料理を食べながらも、ウエイトレスたちの視線を感じずにいられなくなった。彼女たちは客が食べているのを絶えずに「まっすぐな視線」で見ていたのだ。

 いくらなんでも、食べているところが人にじっと見つめられると羞恥心までいかなくとも、決して落ち着けるものではない。いささか消化不良の遠因にもなりかねないと・・・。

 食事の後半、どうしても肩に力が入ってしまった。

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