香港デモ現地取材(8)~香港デモは暴徒の集まりなのか?

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 香港取材にあたって、周りから心配の声もずいぶん上がった。私自身も含めてかなりリスクを感じていた。これは日々メディア報道の影響が大きいとしか言いようがない。放火や破壊活動、そして警察との対峙、暴力シーンを次々と流すメディアは煽るつもりがなくとも、平和な環境に暮らしている人々は知らないうちに恐怖感を覚え、法治社会の常識として、デモ参加者が悪いことをしていると感じてしまうのである。政府はある意味で意図的にこのメカニズムを利用して、「印象操作」しているように思える。

デモ参加者の市民たち

 デモすなわち暴力という認識は間違っている。デモは正確に言うと、前半の平和な行進、中間の移行期、そして後半の暴力対峙と3段階に分かれている。実際に危ないのは後半だけ。私のような一般人が前半に行くだけで、周りからあたかも危険極まりない場所へ行くように思われたのも、ある意味でバイアスが掛っていたように思える。

車椅子に乗る体の不自由な人

 前半の平和な行進には、学生や若者だけでなく、お年寄り、子供連れの家族、車椅子に乗る体の不自由な人、外国人観光客まで幅広く市民などの一般人が参加している。撮影も自由でピリピリした空気を感じることはまずない。

子供連れの家族

 平和な行進が終わると、徐々に後半戦に向けて中間の移行期に差し掛かる。実際には現場では「後半戦参加者」のために、携帯電話預かり(逮捕時警察への情報流出防止目的か)や弁護士支援案内など逮捕に備えた「準備作業」が行われ、明らかに前半参加者と区別されている。後半戦の参加者はいわゆる「勇武派」と呼ばれる少数の前線部隊である。主に学生などの若者で編成された「勇武派」はヘルメットとガスマスク、傘を備え、警察が放った催涙弾を投げ返したり、催涙ガスを弱める液体をかけたりする。

破壊活動に遭う中国系銀行

 当日、私はぎりぎり後半戦の入り口まで付き合った。後半戦になると殺伐としたムードに一変し、勇武派と警察との対峙抗争が本格的に展開される。後半戦に入る前に、一応主催側らしき人がアナウンスをする。要するに、ここからは警察との対峙になりリスクがあるので、一般人はお帰りくださいというものだ。さらに、「後半戦参加者へのお願い、注意事項」たるものもある。

後半戦に差し掛かった街、殺伐とした雰囲気が漂う

 実際にほぼ9割以上のデモ参加者(平和派の一般市民)はここで一気に引き揚げ、帰宅の途につく。印象的に、後半戦はデモの延長よりもまったくの別物だった。

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