20日のデモは、尖沙咀のソールズベリー公園から高速鉄道の西九龍駅までの行進が行われる。出発地点はあの名門ペニンシュラホテルの前にあるだけに、外国人観光客の見物人が多かった。私の隣に立つ欧米系の観光客は絶えず「They are really nice people(本当に素晴らしい人たちだ)」と感嘆しながらデモを見入った。
デモを取材するメディア
13時過ぎ、デモ開始30分前。出発地点である公園では、民主化運動のテーマソングとなった「香港に栄光あれ(願榮光歸香港)」が上空に響き渡る――。
何故 涙 溢れる
何故 怒りに震える
顔を上げ 叫べ香港
自由よ 舞い戻れ
何故 恐怖は襲い
何故 信じて諦めない
傷つき 倒れても未来へ
輝く自由のため
星が墜ちる夜に
遙かに響く自由の鐘
腕を組め 前へ進め
夜は 必ず明ける
友よ 我らの絆
今 希望の革命を
自由香港 永久にあれ
香港に栄光あれ
主に金管楽器が伴奏するこの曲は国歌を連想させるという人もいる(私はその印象を受けた)が、香港は特別行政区であり、国ではないので、作曲者側はこれを否定している。そもそも作曲・作詞者が誰かも不明になっている。ネット民の集団創作品として、バロック音楽と近代の軍歌、英米露の国歌や米国の愛国歌「リパブリック讃歌」、讃美歌「天のいと高きところには神に栄光あれ」などが参考にされたとも言われている。
「香港に栄光あれ」を歌いながら、デモに出発する人たち
2019年8月31日、同曲はYouTubeに初めてアップされ、わずか2週間で視聴回数が100万回を突破。9月11日、150人の香港人アーティストが管弦楽合唱バージョンを収録し、YouTubeにアップ(https://www.youtube.com/watch?v=oUIDL4SB60g)。さらに、オリジナルの広東語版に加え、まもなく北京語だけでなく、英語、日本語、韓国語、ドイツ語、フランス語などの外国語版も相次いで作られた。
「香港に栄光あれ」はこうして民主化運動のテーマソングとして、士気を鼓舞する大切な役割を引き受けた。香港の街に出ても耳にすることが多い。民主化を支持するレストランや商店の中ではBGMとして流れ、前日の「雨傘運動」ドキュメンタリー映画上映会にも歌われた。