マレーシア現時のコロナ感染者急増、実情とリスクとは?

 マレーシアはここ数日、1日あたりのコロナ感染確認件数がまたもや、3桁に急増した。その中身をみると、不法移民を含む外国人労働者が90%以上を占めていることが分かる。特に建設現場で働いている外国人労働者がクラスターを作っている。

 このままいくと、シンガポールの轍を踏み、外国人労働者をメインとした感染拡大循環につながるのではないかと、マレーシア国内では懸念の声が上がっている。

 問題となっている外国人労働者は、合法的な出稼ぎ労働者と不法移民(密入国者)の2グループに分かれる。建築現場の労働者でいえば、シンガポールと同じ問題でドミトリー形式の寮が濃密接触と拡散の温床になっている。これに対して人的資源労働省は、2019年に改正された『1990年労働者宿舎および施設最低基準法令』(446号法令)が6月1日付で発効し、国内全域に効力範囲が及ぶと発表した。ただし、雇用者に準備のため3か月の猶予期間が与えられている(実質的発効は9月1日)。そこだけが気になる。

 一方では、密入国者の不法移民が摘発されれば、移民局拘留センターに送り込まれる。拘留センターでは当座、ある程度の感染拡大が避けられないとみていいだろう。ただ地理的に拘留センターは市街からの遠隔地にあるため(シンガポールは市内にある)、市中感染の発信地となる懸念は少ない。もちろん拘留センターの役人や職員たちは要注意だ。リスクがゼロではない。

 残された問題は建築現場だ。建築現場で働く外国人労働者は原則、自由の身である。先日チェラス(Cheras)ショッピング・センターの保安警備員クラスターとセティア・アラム(Setia Alam)建築現場のクラスターもまさに典型的な外国人労働者クラスターである。この時期に早々と建築工事を再開させた政府の判断が間違っているように思える。とにかく、建築現場どころか人が集まる場所へ行かず、引き続き自宅待機するのが一番の防御になる。

 日本では人権云々騒いで、感染者の国籍公表がタブー視されているが、マレーシアはすべてオープンにしている。バングラデシュ、インド、インドネシア、ミャンマー、パキスタンおよび中国という6か国人が外国人感染者全体の94%を占めている。とにかく要注意だ。これは差別ではなく、市民の「正当防衛」だ。

 マレーシアにもいわゆる「人権団体」と組んでいる弁護士がいないわけではない。特に不法入国者の外国人の集中収容について非人道的として抗議している。これに対して、マレーシアのイスマイル・サブリ・ヤコブ上級相(治安担当)は5月27日談話を発表し、「人権屋」の抗議を一蹴した――。

 「問題を作り出したのは、不法移民だ。入国ビザもなければ、労働許可もない。そういう彼たちは元々我が国に現れるべき存在ではなかった。彼たちを逮捕し拘留センターに送り込む。食事もきちんと与えているし、PCR検査もやっている。感染確認された者には治療も提供している。これが非人道的とでもいうのか。モグラのように密入国して我が国に入ってきた不法移民にVIP待遇を与えろとでもいいたいのか。不法移民をヒーロー扱いするな」

 素晴らしい発言。思わず拍手を送りたくなる。不法入国者は犯罪者だ。まずこれを理解しておくべきだ。国家というのは、自国民と合法滞留外国人の権利と利益を守るのが第一義的な責務だ。

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