論文匿名査読者の「意地悪」に感謝、埋没費用惜しむ気持ちに救われた

 査読論文が、学会誌に掲載されることになった。印刷会社から送られてきた校正稿を眺め、思わずうれしくなった。日本国内の学会誌掲載はこれが初めて、本当にうれしい。

 査読というのは、本当に地獄のようなものだ。2名の査読者がいて、1人は優しかった。1回の査読で簡単な修正で認めてくれたが、もう1人の査読者は厳しい。根掘り葉掘り、何回も何回も細かいところを追及してきた。正直、途中投げ出そうとした。こんなに時間を費やして、コンサル実務のような売り上げが上がるわけでもないし……。

 結局、諦めきれずにいたのは、「埋没費用」を惜しむ気持ちがあったからだ。埋没費用は損切りで、本当は前期投入したコストを切り捨てなくてはいけないものだが、私は今回損切りできなかった。だが、振り返ってみると、それが良かったのだ。私が持っていなかった目線、気付かなかったことを他人が教えてくれたのだ。しかもタダで教えてくれた。

 いかにも意地悪そうな指摘をみて、気分が悪くなった瞬間もあった。考えてみると、査読者を匿名にするブラインド方式だから、そうした「意地悪」ができたわけだ。ふと思ったことだが、コロナ対策の専門家会議も、覆面対談や匿名レポートにすれば学者たちももう少し本音を「意地悪」そうにいえたかもしれない。

 感謝、感謝、また感謝だ。

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