嫉妬学(1)~妬みの発生メカニズムと貧困平準化

 「妬みを抱くのは、自分と同じか、同じだと思える者に対してだ。それは家系・血縁関係・年齢・人柄・世評・財産などにおいて似通った人のことだ。……時・場所・年齢、世の評判などで人は自分に近い者を妬む。……競争相手や恋敵、一般に同じものを欲しがる者と人々は競う。そのため彼らに対し必ず嫉妬心を覚える」

 アリストテレスが名著『弁論術』(羨望、第2巻第10章)にこう指摘した。

 以前インド人の友達がインド元来のカースト制度について、それなりの社会的効用があって別に悪いものではないと言ったのを思い出す。その効用とは、妬みに起源する階級間の闘争意識を弱化することだ。そういう意味で、プロレタリアートとブルジョワジーの階級闘争を煽ぐマルクス共産主義とは相容れない。

 逆に社会主義・共産主義者はいつでもどこでも「妬み」を利用し、それを階級闘争の燃料とする。階級の代わりに差異をもつグループを分断して「差別反対」という美辞麗句を掲げて闘争を煽ぐ。最終的に自分たちだけが政権を奪取したところで「特権階級」を作り上げる。

 その特権階級は雲の上にあって庶民からすれば、見る機会すらない。次元が違いすぎるから、自分に遠いものとなり、妬みを抱かなくなるのだ。次元が違う。自分との同一性・類似性が見出せないから、嫉妬心を持ち得ない。このメカニズムを利用するわけだ。

 階級制度は、下層者と上層者との比較を免れるためにあるのだ。比較ができなければ、羨望や嫉妬の心に悩まされない。それで統治の安定化につながる。だから、社会主義・共産主義者は、階級闘争を彼たち自身が特権階級になるための武器に使うのであり、目指すは究極の不可視化した階級社会である。

 昨今「等しく貧しくなろう」と叫び、貧困の平準化を提唱する人物には、特に要注意である。

<次回>

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