病床よりも墓穴、愚民対する最終警告

 ずらりと並んでいるのは、病床ではなく、墓穴である。埋葬済みのものもあれば、土だけ掘られて、埋葬待ちのものもある。広大な墓地の空撮写真がマレーシアの主要メディアに掲載された(写真は、5月31日付華字紙南洋商報記事『これ以上言うこと聞かねば、病床でなく墓穴へ』)。

 国民、特に愚民どもに対する最後の警告だ。準ロックダウンが1月13日からスタートし、延々と4か月半も続き、コロナ感染が一向に収まらず、拡大する一方だ。経済を死なさないためにも、政府が制限付きではあるが、経済活動を容認してきた。

 しかし、自主的な自粛に託された期待は見事に裏切られた。人間は全員、性善説に適用できないことが、改めて証明された。数少ない違反者でもコロナを正確に拡散させることができる。

 少数の違反者によって大多数のルール遵守者が被害者にされた。これ以上はもう容認できない。日本と違って、「完全ロックダウンを」という大多数国民の意思が反映され、マレーシア政府はついに6月1日から再び完全ロックダウンに踏み切った。

 命か経済か、究極のトリアージに対して、マレーシア人は答えを出した。利に敏い華人たちでさえロックダウン賛成に回り、「生意可以再做、生命只有一次」(ビジネスはまたやればいい。命は一度しかない)としっかり認識した。

 有事であることを、多くの日本人がいまだに理解していない。長く愛された居酒屋の閉店を悲しむ余裕があるうちに、そう悲しんだほうがいいかもしれない。センチメンタル物語が死の悲劇に変わったとき、もう遅い。

 『これ以上言うこと聞かねば、病床でなく墓穴へ』。こんな記事を載せるメディアが日本にあったら、それこそ自ら墓穴を掘ったも同然。そうした意味で、日本という国は既に、分別のできない国になっている。愚民国家だ。

 、どっちが怖いかといえば、断然、愚。悪は、愚を餌にして繁殖増大するからだ。

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