「マレーシア移住」という言葉は、日本人にとって遠い存在になった。
8月12日付け記事『マレーシア移住は狭き門に、富裕層限定の新制度発表』で述べたMM2H条件の大幅引き上げについて、マレーシア政府はいったん再検討としたものの、ついに大きく譲歩することなく、新規定の実施に踏み切った。
本日の発表によれば、既存のMM2H保有者には、個別事案である程度柔軟に対処するとした。例えば、最低100万リンギットの定期預金(積み増し)を必要とする、など。その他の新規MM2H申請者には、すべて新規定を適用する。
新規定とは、4500~5000万円以上の流動資産を所有し、その中の約3000万円をマレーシアに定期預金し、そのうえ日本で毎月約100万円以上の収入を得る、という資産・所得の条件である。さらに、年間90日以上、マレーシアに滞在しなければならない(100万円以上の月給を取って、年間3か月もマレーシア滞在、どんな人たちだろう)。
保有資産総額条件をクリアできる日本人は約8~9%、相当の資金移動可能でかつ月収条件をクリアできるのは、そのなかの半分程度だとすれば、日本人の4~5%が上限。さらにそのなか、年間90日のマレーシア滞在が条件であるから、せいぜい1%が上限ではないかと思われる。最終的に、その1%中の何人が実際にマレーシア移住の意思があるのだろうか。
そういう意味で、「マレーシア移住」という言葉も、死語までいかなくとも、ほぼ現実味を失ってしまう。
一方、MM2Hをすでに保有し、かつ現地在住している人たちにとってみれば、ある程度の定期預金の積み増しによって、資格が更新可能であるから、MM2Hはとりあえず貴重な資産になる。これからは、わずかな資産家が新規移住者としてマレーシアにやってくる。全体的に日本人移住ビジネスという業態も構造改革を迫られている。