オミクロン株登場、ワクチン戦略論の破綻も不可避か

 オミクロン株(B.1.1.529変異株)、最新で史上最強の抗ワクチン変異株がついに登場。何も驚かない。想定内、いずれそうなるだろうと繰り返し、繰り返し予告してきた。束の間の平和は人間を油断させるためだった。忘年会どころではない。

 ワクチンが効かない。私が8月1日付けで『ワクチンの無効化宣告、人間はウイルスよりはるかに馬鹿だ』という記事を書いた翌日、8月2日付けでCNNが報じた――。『ワクチン効かない変異株の出現は「ほぼ確実」、英科学者が予測』。ワクチンが効かないコロナ変異株は「ほぼ確実に」出現するだろうと予測した英学会の研究論文が発表された。

 世の中は、ワクチン、ワクチン、ワクチン一色。問題は、どのワクチンかだ。ワクチンも、対応変異株ごとにバージョンアップし、相応の命名にしないといけない。

 いってみれば、今使われているのは基本的に原初株世代に対応するV1.0版のワクチンだ。デルタ株対応ワクチンのV2.0版は未だに誕生していない。それが困ったもので、原初版V1.0をブースター増量して誤魔化してきた。今度のオミクロン株ワクチンはV3.0にあたるが、V1.0の更なる増量で問題解決できるのか?

 製薬会社にとっては、バージョンアップの新規開発は莫大な投資が必要。しかし、V1.0の反復増量接種では、工場の生産ラインをフル稼働させれば、大儲けする。そうした意味で、製薬会社株は、まだまだ買いのようだ。

 オミクロン株には、現在使用中のV1.0版ワクチンは、「どうやら効くようだ」というメディアもある(11月26日付ニューヨークタイムズ記事「New Virus Variant Stokes Concern but Vaccines Still Likely to Work」)。まあ、そういうだろう。「効き方」が悪くても、「効かせ方」で調整すればいいという理屈だ。ワクチンの定期接種、しかも高頻度定期接種(年に2~3回以上)という「効かせ方」が落とし所ではなかろうか。

 ワクチン接種でウイルスをやっつける。マクロ的な、静態的な一般論である。最大の問題は、動態的に生まれ変わる変異株の動きである。動静混同のワクチン戦略論はあまり意味がない。そのうえ解決手法をワクチン一本に限定するのがナンセンス。

 ただ、この手の話はとにかく、人気がない。人間は、見たくない、なってほしくない将来を避ける本能があるからだ。希望的観測のもう1つの側面は、この忌避本能だ。自分の希望する将来を反証するあらゆる事象や仮説から目をそらし、耳を塞ぎ、心の安寧を保とうする。

 そして、残酷な現実が訪れたときには、「想定外」で自分に免罪符を発行する。それは、想定しようとしなかっただけの話だ。口と鼻以外に、目を覆うアイマスクや耳栓を常時装着している人が多いのである。

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