タンパク質vs炭水化物・糖質。今日の現代社会では、どうもこの(いささか対決っぽい)図式が印象的にわれわれ(少なくとも私)の頭に刷り込まれている。しかし、最近出会ったこの1冊『科学者たちが語る食欲』(デイヴィッド・ローベンハイマー/スティーヴン・J.シンプソン)で、ずいぶん認識が変わった。
「生」という字は、「生む」ことも「生きる」ことも意味する。しかし、「よく生む」と「よく生きる」といういいとこ取りができない。著者たちの長き実験検証データによれば、次のような仮説が得られた。
「高タンパク質・低炭水化物」は、「よく生む」系にあたり、繁殖を利する一方、「高炭水化物・低タンパク質」は、「よく生きる」、つまり個体の寿命延長につながると。正直、この視点を私はもっていなかった。
単純にカロリーという量だけでなく、栄養素という質をもっとみるべきだ。これはある程度知っていたが、栄養素の組み合わせの変化によって異なる結果が現れることは知らなかった。まったくの勉強不足だった。
本書で紹介された実験によれば、動物は無意識的に(本能的に)栄養素ごとの「食欲」をもって、そこでバランスを取っているという。これは自然界のメカニズムというか、神から付与された本能のようなものだが、しかし、人間という動物は現代社会(金銭・職業や消費市場)によって神から与えられたメカニズムがかく乱されたのである。
要するに、われわれ現代人の食や生活は、いろんな外的影響を受け、すでに「非自然体」化してしまったのだ。