マラッカ(3)~ポルトガルもどきの料理

<前回>

 マラッカの「ポルトガル人居住区」にある「Restoran De Lisbon」というレストランに入り、楽しみにしていたポルトガル料理を食べる。まったく大袈裟な話だ。はっきり言って料理の正体は、ポルトガルもどき。

 私はポルトガルを旅したことがある。スペインのアンダルシアから陸路でポルトガルに入り、南方のファロに滞在したり道草を食いながら北上しリスボンに到達するという長い旅だった。その間はもちろん郷土料理も含めてポルトガル料理を食べ続けた。しかし、それらの料理に似ても似つかぬものがここマラッカのポルトガル料理店で出されている。

 つまり、ポルトガルもどきである。正確に言うと、中華料理の一種にすぎない。だから、ポルトガル産ワインとかポートワインとかでなく、私は中国産の白酒を持ち込んで(酒持ち込み自由)飲む。よほど料理にマッチしているからだ。

 もどき料理を知りながらの「確信犯」と言われても返す言葉がない。私は結構もどき料理が好きで、マニアックなほうかもしれない。商売という意味で言わせてもらうと、売れない本格料理よりは売れるもどき料理のほうが断然良い。売れるもどき料理は「イノベーション」を必要としていてそこから価値が見出せるからだ。

店の関係者と話し込む

 海外には日本風の和食、日本もどきの料理がいっぱいある。現地人客の「おふくろの味」や日本は要するにこういうものだという「NIPPONイメージ」に合わせて創意工夫されたところに価値が凝縮されている。本物料理の「発信」よりももどき料理の「受信」需要が優先される理念である。

 松久信幸氏の「NOBU」は、その総本山といえる。素晴らしいと思う。逆に「本物」「本格」にこだわり続けても一向に成功できない日本人経営者やオーナーシェフは、誇りや自己満足に終わってしまう。もちろん、それはそれでいい。

<次回>

タグ: