ペロシ米下院議長はアジア歴訪に向かっており、搭乗機は給油経由地のハワイをすでに出発した。全世界が注目しているのは、彼女の台湾訪問があるかだ。
よく語られているのは、ペロシが訪台した場合、習近平はどう反応するかということだ。習は三期目の続投を控え、ここでは妥協できないから、軍の投入、米中激突ないし戦争も辞さない。というのは確かに1つの可能性ではあるが、一方、習の三期目はとっくに確定済みであるから、あえて危険を冒したくないという仮説があってもいい。
正直、読み切れない。ただ裏を返せば、ペロシの訪台という挑発こそが好機だ。この際に台湾攻略も一気呵成にしてしまおうという少々過激な考え方もなくはない。ペロシ訪台、4つのシナリオ――。
シナリオ1、訪台。中国は過激な軍事行動(ペロシ搭乗機に威嚇ないし攻撃を仕掛けるなど)に踏み切り、その結果次第で、勝敗がはっきり決まる。
シナリオ2、訪台。中国はマイルドな軍事行動(軍機の台湾本土領空侵入など)で対処、直接軍事衝突にならず、米中の引き分けで一件落着。米国は訪台の約束を果たしたし、中国も対台関係では従来の一線を越えて一定の成果を上げたという「Win Win」の結果。
シナリオ3、訪台。中国は軍事行動に至らず、従来通りの外交的抗議にとどまる。これはいうまでも米国の大勝、中国の敗北。これだと、習近平の政治基盤が大きく揺れ、今後の統治に大きなマイナス影響を与えてしまう。
シナリオ4、訪台しない。中国大勝、米国大敗。
本来ならば、米国は堂々と「1つの中国」政策の破棄を宣言して、バイデン大統領が台湾訪問するのが、大国のあるべき姿勢であり、何よりも台湾に対する基本的な礼儀である。ペロシのような、訪問するかしないかも明言できないのは、まるで「不倫行為」だ。それに「米国の予定に合わせる」とする蔡英文政権もまともと言えない。
ペロシのアジア歴訪。人権だったら、ミャンマーに行くべきだろう。貧困だったら、スリランカが待っている。なぜ、台湾?選挙。中間選挙で民主党が負ければ、ペロシは下院議長の職を失う。それが本音ではないか。蔡英文も然り、選挙のためのパフォーマンスだろう。
<8月1日追記>
諸々、直感的に、ペロシは台湾訪問するだろう。
彼女はアジア歴訪に向かう途中、ハワイでの給油経由時間が長すぎる。何をしたかというと、太平洋米軍司令官からの説明を受け、真珠湾のアリゾナ記念館を訪問した。
司令官からは米軍警護体制や万一緊急時のための安全説明を受けたと思われる。真珠湾アリゾナ記念館訪問は、ペロシが中国にあるメッセージを送ろうとしたのではないかと――。
「日本は真珠湾攻撃で米国に宣戦布告したが、最終的に米国に惨敗した。中国もやりたければやってみろ。同じ結末になるぞ」