ペロシ訪台のインパクト(1)~米中「Win Win」の構図

 ペロシが8月2~3日訪台した。7月31日付記事『ペロシは訪台するのか?4つのシナリオ』で述べた第2のシナリオになった――。

 中国はマイルドな軍事行動で対処、直接軍事衝突にならず、米中の引き分けで一件落着。米国は訪台の約束を果たしたし、中国も対台関係では従来の一線を越えて一定の成果を上げたという「Win Win」の結果。

 ただマイルドな軍事行動はどこまでマイルドか、それが経済にどれだけ影響するか、しばらく注目する必要がある。

 現時点では、かなり「マイルド」な雰囲気であり、情勢はさほど緊迫しているように見えない。そこからいくつか読み取れるかもしれない。まず、習近平の三期目続投はすでに確定済みで、あえて危険を冒して台湾に軍事行動を起こす必要はない。それと同時に、本格的な軍事衝突の準備も中国軍にはまだ出来ていない。

 一方、「Win Win」といっても、米民主党政権側の「Win」が短期的に大きい。特にペロシ自身はヒロイン物語を作り上げ、家族スキャンダルから見事に逃れたし、民主党の中間選挙にも2024年の大統領選にも得点になることは間違いない。トランプの2024年再選には、良いニュースではない(やり方によっては挽回可能だろう)。言ってみれば、トランプの「王道系」反中がバイデン政権に「邪道系」反中にすり替えられた。

 中国は軍事的に大きな動作ができない。その分、対米台やないし対日欧西側における経済面の引き締めを強化するだろう。結局、影響は民間に跳ね返ってくる公算が高い。

<次回>

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