魚食いの旅センポルナ(9)~誘拐リスク、渡航中止勧告の捉え方

<前回>

 センポルナ4泊5日魚食いの旅が終わった。美しい海、のどかな漁村、美味しい魚、なんと平和な光景だった。しかし、実は私は「危険とされる場所」に行ってきたのだ。

 日本外務省の海外安全情報では、センポルナ周辺地域を含むサバ州東側の島嶼部・周辺海域には、「危険度レベル3」、つまり「渡航中止勧告」が出ていたのだ。たとえ私が利用していたタワウ空港も「危険度レベル2」「不要不急の渡航中止勧告」になっており、飛行機の利用も控えるべきだったのである。

 外務省サイトでは、こう警告が発されている――。「サバ州東海岸一帯の大部分及び周辺海域では、海賊事件、身代金目的の外国人誘拐等が発生しているほか、様々な武装集団が活動を行っていることもあり、どのような目的であれ渡航は止めてください」。と、怖い怖い話になっている。

 2014年4月センポルナの水上コテージであった誘拐事件、同海域での武装集団活動などの情報、特に誘拐事件発生の背景と経緯について、私は事前把握していた。センポルナ市内は基本的に危険はないものの、水上コテージの滞在は要注意という結論に至った。ただ当該地域が無差別に「レベル3」「レベル2」に指定されたことには疑問を感じずにいられない。

 一方、一部の日本人ブロガーは「いたって平和で安全な場所」「外務省情報は当てにならない」と言い放っているのも無責任だ。当該地域・海域は歴史的にマレーシアとフィリピンが領土紛争を抱えているだけに不安定であり、これが犯罪者に利用されている側面もある。

 そういった意味で恒久的に「安定した不安定さ」が続くかぎり、外務省は立場的に区切りをつけて「レベル」を更改(ダウン)することがなかなか難しい。きっかけがないからだ。その反対も同じ。一見恒久的な「平時」が続くなか、危険を感知し、有事に切り替え「レベル」をアップすることも難しい。役人の立場も考えてあげる必要がある。

 結果的に、個人個人の自己判断と自己責任だ。あとは、運。

<終わり>

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