中国「ゼロコロナ」政策をやめても、習近平の勝ち

 いつもの検査がなくなった!陰性証明も要らない。

 上海市は12月5日からコロナ対策を緩和し、地下鉄や屋外の公共の場所での陰性証明は不要となった。他の地方も相次いで緩和措置が取られたことが報告されており、情況は一変した。中国は「ゼロコロナ」政策をやめたのだろうか?習近平はメンツが潰れ、負けなのか?

 全く逆で、習近平の勝ちなのだ。過酷な「ゼロコロナ」政策に抗議する中国国内のデモ活動に屈して、習近平はやむを得ず方向転換に踏み切った、という大方の読みは浅すぎる。

 習近平は「国民の皆さんも3年間のコロナ規制にうんざりしていることは理解できる」と明言したのは、なぜだろうか?国民がうんざりしているから、ゼロコロナをやめた。民意を汲み上げて十分に「民主主義」だろう。西側諸国も文句が言えない。

 民主主義は、民意の裏側に民衆の自己責任が付きまとう。だから、開放して結果が悪かった場合、習近平政権は責任を取らずに済む。さらに「ほら、だから民主主義ってダメだろう」と堂々と言える。逆にそのままコロナが再燃することなく収束に向かった場合、それはまた良いタイミングに習近平政権が政策転換を決断したことで得点稼ぎになる。

 どっちに転んでも、習近平は損はしない。「ゼロコロナ」政策の政治的目的はすでに達成した。まさに「ゼロコロナ」政策の転換、ステップダウンのタイミングを探していた矢先のデモ発生で、逆手に取っての決断だったのではないかと。

 さらに、WHO緊急事態対応を統括するライアン氏は12月2日の記者会見で、中国が「ゼロコロナ」政策の緩和を進める姿勢を示したことを「喜ばしい」と歓迎し、「自国民が苦しんでいる時に、彼らの声に耳を傾けることが重要だ」と指摘し、むしろ習近平にお墨付きを与えた。

 なので、習近平の勝ちである。

<次回>

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