アメリカはなぜ中国に勝てないか

 アメリカが中国に勝つために、どうすればいいのか。

 自分を強化するか、中国を弱化するか、という2つの選択肢しかない。最近のアメリカを見ると、とにかく中国の足を引っ張り、中国を抑えつけようとしていることが明らかだ。つまり、アメリカは中国を弱化する方向に走っている。それは非常に辛い。ある程度の主導権が相手に握られているからだ。

 では、アメリカは自己強化することはできないのだろうか。

 とりわけ、最近話題にもなっている半導体やハイテクのような、科学技術面におけるイノベーションについて、アメリカは制裁で中国を抑止するよりも、自ら力を入れ、常に中国の先を走っていればいいわけだ。アメリカはむしろ先天的優位性をも有している分野であるから、なぜできないのか。

 理由は、たった1つ――。アメリカは、資本主義と民主主義の結合体だからである。

 資本は利益に走る。しかし、研究・開発といったイノベーションは大きな投入が必要である一方、短期的に利益が出にくかったり、不確定性も高い。すると、資本はリスクから逃げ、なかなか集まらない。

 ならば、国家が適正な意思決定を行い、必要な産業や技術に、赤字でも長期的国家戦略として先行投資しなければならない。しかし、民主主義制度下では、大衆はこのようなリソースの配分をなかなか許してくれない。政治家も選挙しか見ず、長期的な国家像を描こうとせず、政策も場当たり的になりやすい。

 一方、独裁専制は長期安定性をもとに、将来を見据え、国家主導の産業政策を策定し、戦略的投資を決めることができる。意思決定の遅延や誤謬が民主主義政権よりも少なく、政策の一貫性が高まる。財政面では、国家予算やリソースの配分において民主主義よりも、高度な集中権力を持つことが一般的であり、これにより、政府は特定の分野や案件に対する資金を重点的に割り当て、特定の産業や技術分野に資金を供給し、研究開発を奨励し、長期的な研究開発計画、イノベーションを支援することができる。

 中国は当初、資本主義の市場原理に基づき、たとえば半導体などのハイテク分野でも、経済的合理性からグローバル市場での外注・調達を中心に運営してきた。しかし、いざアメリカが制裁に乗り出すと、もはや経済よりも政治で勝負する場面に変わった。そうすると、中国は独裁専制の強みを発揮し、ハイテク分野の取り組みに挙国体制で乗り切る。

 そういう意味でアメリカが中国になかなか勝てない。

 

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