マレーシア移住(5)~マレーシアの不動産が値上がりしない理由は?

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 マレーシアの不動産がなかなか値上がりしないのは、マレーシアの物価水準が安いからだ。それだけ簡単な原理で、不動産も物価の1つであるからだ。業者のなかに、マレーシア移住のメリットとして、「物価が安い」ことを挙げながらも、不動産投資を勧める者がいる。甚だ自己矛盾である。

 物価の安い国でも、不動産の値上がりが見込める国がないわけではない。非常に特殊なケースで、かつての中国が好例。私が1994年中国に駐在した当時、まさにこの状況だった。その当時、上海市内のマンションの1つでも買っておけば、20年後の2010年半ばは数倍、いや十数倍のキャピタルゲインを手にしたのだろう。私は好機を見逃した。

 しかし、マレーシアはこのパターンに当てはまるかというと、違う。マレーシアは逆に特殊なケースで、なんとなく先進国っぽくても、先進国になれない「万年途上国」あるいは「万年中所得国」から脱却できずにいる。その背景や理由を述べるには紙幅が足りないので割愛するが、事実だけここで確認しておきたい。

 マレーシアは、財団法人ロングステイ財団の調査において、14年連続(2006~2019年)で日本人が住みたい国「世界No.1」に選ばれている。その主な理由の1つは、先進国っぽいが途上国の物価であるからだ。一般の日本人サラリーマン家庭でも気軽に移住できるわけだ。

 現地の賃金・物価水準が安いなか、不動産だけは値上がりする。そんなことがあったら、マレーシア国民には耐えられたものではない。あり得ないのだ。日本人にも同じが同じことが言える。物価が安く、給料だけはどんどん上がったほうがいいと考えている日本人が多いが、これもあり得ないことだ。

 だから、物価の安いマレーシアに、不動産投資を勧める業者は、まったくのでたらめだ。業者には物件販売の成約手数料が目的で、マレーシアという国も作り過ぎた不動産を外国人に買わせるのが目的で、いずれも物件の収益性などは関係のないことだ。

 一部特殊なケースを除いて、マレーシアの不動産投資で儲かる見込みはほぼゼロに近い。

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