心から中国を愛せない理由、経済大国とマナー小国の悲劇

 中国語セミナーが終わった。予測通り、欠席者もいて、早退者もいた。その代りに、オーバーブッキングの分、全員テーブル付きの席に座れた。

 セミナー中に、何回も電話に出てしかもしゃべり続ける中国人がいて、「いい加減に、やめなさい」と私から厳重注意した。中国人のマナーが悪い!と書いたら、いや、立花さん、あなたがたまたま見た状況だけではないか、日本人もマナーの悪い人がいるよ、と反発する人が必ずいる。

 そのとおりだ。日本人もマナーの悪い人がいることは間違いない。私は、マナーの悪い日本人に抗議したことだってある。ただ、私自身の経験では、マナーの悪い中国人の出会い率が、はるかに日本人より高い。これだけは、事実だ。私ひとりの事実かもしれないが、事実は事実だ。

 セミナーの前、花園飯店の日本料理店「山里」で昼食を取りながら、セミナーの最終準備をしていたら、近くに8人組の中国人客が来て、それはそれはワーワーギャーギャー、静かで上品な店内ムードが一気に壊され、まるで居酒屋状態だ。しかも、騒ぎは一向に収まる気配がない。隣の西洋人客グループが何回も不快そうに眉をひそめて露骨に抗議の姿勢を示したが、8人組はまったく気付いていないか無視しているか、そのまま歓声を上げ続けた。諦めた外国人は、頭を横に振って、軽蔑の表情に切り替えた。

 私は、抗議しようと、服務員を呼んでも呼んでも、8人組の勢いに勝てず、声が埋もれてしまう。それだけうるさい。とうとう、「いい加減にしろ」と私が一喝した。隣の外国人グループから拍手喝采を浴びたとき、私はとても悲しかった。

 そして、店を出ると、追っかけてくる日本人マネージャーが一生懸命頭を下げて謝罪しているのを見て、悲しい一線を越え、一瞬、私は絶望的などん底に落ちた。マナー違反行為を軽蔑する西洋人、マナー違反行為のために謝罪する日本人、マナー違反者の中国人、そして、すべて、この中国の国土での出来事。経済大国、マナー小国の実態に悲哀を感じずにいられなくなった。

 以前、ソウルを旅したとき、ごく普通のレストランで、それも少々声の大きい客がいると、友人の韓国人が悲しそうな顔で、「すみません。韓国人の恥ずかしいところを見せてしまった。恥ずかしいです。許してください」と頭を下げる。私は心から感動を覚え、韓国という国は必ず強くなると確信した。

 平均マネー度でいえば、いままで、私が旅してきた40か国の中、中国は間違いなく、最下位の部類に入る。何を言われようと、私はそう感じたのだ。なぜなら、あまりにも早い経済成長に釣り合わず、平均マナー度の低さには、余計アンバランスを感じずにいられなかったからだ。

 定年後はどこに住むかと聞かれると、私がいま答えられるのが、まず中国ではないことだけは確実だ。心からこの国に愛情が湧かないのが、私だけかもしれないが、これは事実だ。批判されてもいい。私は嘘をつきたくない。

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