台湾総統選、親中派当選と反中派当選のもつ意味とは?

 あと1週間で台湾の総統選だ。日本のメディアではこんな論調が目立っている――。親中派が当選したら、台湾は中国に平和統一されてしまう。第一列島線を失うことは、日本にとっては深刻な問題だ。だから、反中派に当選してほしい。

 一見真っ当な論理ではあるが、少し突っ込むとボロが出る。反中派が当選すると、台湾は中国による統一から逃れることができるのか。答えがNOであれば、それはおそらく平和統一でなく、武力統一になるだろう。もし、結果がどっちに転んでも統一だったら、武力統一よりも平和統一のほうがまだマシではないか。

 中国での民意調査によると、最近特に急進的統一派の間で、反中派(民進党頼清徳氏)の人気が非常に高い。なぜなら、一層反中派が当選すれば、中国は平和統一を断念し、早い段階で武力統一に乗り出すからだ。だから、親中派と反中派の違いは、統一と不統一の選択でなく、平和統一か武力統一の選択なのだ。

 残念ながら、日本人の問題の捉え方は非常に表面的である。事実判断を見落とし、善悪の倫理・価値判断に基づく希望的観測が先行する。「そうあるべき」「そうなってはならない」という「べき論」が、「そうならなかったら」「そうなったら」のリアリズムに基づくリスク管理論を抹殺してしまう。

 台湾統一、第一列島線の喪失によって、日本はある意味で中国の属国になる。正確に言うと、日本の親分がアメリカから中国に変わるということだ。では、どのような「変わり方」が日本にとって最も有利かを現実的に考える必要があろう。武力統一によって日本は最後まで中国と徹底抗戦して降伏した場合は、まさに二度目の敗戦になる。それでいいのか。

 善悪二元論では国際政治は語れない。国家利益が至上である。そうした目線をもたなければ、本物の政治家とはいえないし、理性的な国民にも程遠い。

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