親中台湾人論客ブラックリスト発表、民主主義劇場は今日も満員御礼

 台湾の親中派論客ブラックリスト、トップ10――。台湾のNGO「情報環境研究センター(IORG)」は2023年12月26日、分析報告書を発表し、中国共産党の官製メディアが最も頻繁に引用する台湾の政治評論家トップ10のリストを明らかにし、これらの著名人が中共の「台湾人で台湾を批判する」ための「世論の武器」になっていると主張した。

情報ソース:IORG

 NGOといえば、特定の政治目的や資金出所をもつ場合が多い。台北市を拠点とするIORGは、「台湾の民主主義を守る」「中国共産党の台湾に対する情報操作を暴く」などを目的としている。民主主義は言論の自由を守るうえ、多様な立場や意見を包摂的に容認するのが大前提であり、事実の捏造がない限り、問題なしとすべきだろう。なぜ、そこまでセンシティブになるのだろうか。

 私は日々、左右、親中反中両方の評論家の論評を視聴している。正直なところ、反中陣営の評論家のほうがよほど酷い。分析よりも推測、憶測中心の暴論を延々と展開し、情報操作に余念がない。情報操作に善悪はない。マーケティングだって、情報操作の一種にすぎない。言ってみれば、事物の一側面を取り上げたり、特定の解釈を加えたりすることだ。

 2023年12月末のブリンケン米国務長官の発言の一節を見てみよう――。「ウクライナ人は不可能を達成した。世界最大の軍隊の1つであるロシア軍に抵抗した。プーチン大統領がウクライナとの戦争に負けたのは、ウクライナを地球上から消し去り、ロシアに併合するという主要目標を達成できなかったからである」

 ロシアに対する反転攻勢に失敗し、国土を失い、多くの人命の犠牲を払い、世界トップクラスの腐敗政権を抱え、いよいよ崩壊直前に至ったウクライナのゼレンスキー政権に、まさかの勝利宣言と高評価。勝利を定義する者は常に勝利する、というのも、情報操作の極意であろう。民主主義の情報操作が善で、独裁専制の情報操作が悪、というのもまた情報操作ではないか。

 ブリンケンの発言に虚偽も含まれている。プーチンの主要目標は、ウクライナ併合ではなく、「非ナチス化と非軍事化、中立化」である。プーチンの目標設定を勝手に改変したのは、ロシアがウクライナ戦争に負けたという結論を導き出すための情報操作にほかならない。

 どんな政権でも度合いが異なるものの、情報操作は日常茶飯事。結局、情報を受け取る側(国民)がしっかりそれを見破ることができるか否かの問題だ。残念ながら、一般大衆はその能力を持ち合わせていない。つまり、大衆は政治に参加する能力が著しく欠如しているのである。

 プラトンは、「劇場支配制」という言葉を使って、民主主義は無知で貧しい人々に迎合することで善良な統治を破壊する、見かけ倒しの発明だと指摘した――。「大衆が永久不変の政治法則に逆らってあらゆることに口を出す資格を得ることで、公共の利益を気取りながら、力のない者を美辞麗句でそそのかし、力のある者が無法者のように振る舞う統治のあり方」

 民主主義は、命懸けで守るに値するほどのものではないのである。

タグ: