現代社会は、上層階級が下層階級に対して、消費搾取と労働搾取という二重の搾取を相乗効果的に行っている。前述した通り、下層階級の消費者は、自分が所属する、または所属したい集団の記号を示すために消費行動を取る。その消費行動は、内向型と外向型に分類される。
内向型とは、自分に言い聞かせ、自己に確信させるための消費行動を言う。たとえば、同期入社の仲間がみんなマイホームを購入したところ、自分も買わないと、何だか落ちこぼれみたいになってしまうので、ついつい無理してでも買ってしまう。マイホームは、自分が所属する集団の記号になっている。その記号を入手したところで、安心すると。
マイホームは、いわゆる人並みの暮らしを入手する記号になった以上、一生ローンを背負っても家を買わなければならない。大衆のこの心理状態を醸成したのは、戦後日本社会における最大のマーケティング成功事例と言える。デベロッパーや銀行などの利益集団は、これで代々永久的に消費搾取を続けられる。
労働者は、ローン返済のために一生働く運命だ。日本企業はいわゆる終身雇用という仕組みをつくり、ほとんどの日本人サラリーマンに対して労働搾取を、これも生涯を通じて続けられる。いずれも見事な搾取の仕組みだが、搾取される実感を一般国民は持つことはなかろう。
外向型とは、他人に見せ、ある種の情報やメッセージを伝達するための消費行動を言う。たとえば、上記のマイホームの延長になるが、最近流行っているタワーマンション。タワマンに住むのは、エリート・サラリーマン、経営者、成功した人々だという記号がつくられた。
すると、収入の少々高い人たちは、もっと裕福な暮らしや金融資産づくりができたはずなのに、無理して高額なタワマンに住む。年収がどんなに高くても、住宅やステータス確認のための高額消費(ブランド品や高級レストランなど)によって、結局、大した預金もできないまま、消費搾取と労働搾取をされる羽目になる。
不動産や自動車などの高額消費はともかく、日常的な消費活動のなかにもヒントがたくさんある。例えば、イベント消費。とりわけ、クリスマス、バレンタイン、ハロウィンという3大西洋の祭りは、宗教色が濃く、日本人に何の関係があるのか。大した関係がなくても、とにかくイベント、集団の記号である以上、参加しなければと。大した収入を得ていない若者からも、容赦なく搾取する。
では、次節で私自身の消費行動を紹介したいと思う。