馬鹿じゃねぇの!外国人にこき使われる日本人

 日本人のサービスが世界一。――インバウンド、日本へ来て感動する外国人が多いことは事実だ。それは、日本人の感情労働(Emotional Labor)が優れているだけでなく、ほぼ無料で提供されているからだ。つまり、価値(Valie)は、価格(Price)に反映されていないということだ。それで外国人は「あり得ないこと」を「日本人の親切さ」に読み替えているだけだ。

 日本人が親切にしているのは、「顧客」「身内」だけで、外国人が「顧客」として日本に来て接しているのは日本人の対客感情労働にすぎない。外国人は実際に日本に住んでみると、いかに「身内」になれず排除されていることを実感するだろう。

 感情労働とは、肉体労働や頭脳労働以外にある第3の労働であり、企業(生産者)の顧客である消費者に対して、心理的にポジティブな働きかけをして報酬を得ていく労働を指す。求められる一定の感情表現があり、その表現が業務の質や成果を決める。

 日本人の感情労働は、対顧客だけでなく、いわゆる共同体内顧客(上司や同僚、いわゆる身内)に対しても遜色がない。共同体の空気を読む力の育成は、感情労働の基礎体力づくりだ。空気が曖昧だった場合は、忖度。技術が芸術へと昇華する。それが私が言っている、日本人が親切にしているのは、「顧客」と「身内」だけだという理由である。

 日本人は感情労働に多大なエネルギーを投入しているだけに、当然「対価給付」を求める。

 まず、「身内」の場合、ムラ共同体の利益共有という「対価」が支払われる。しかし、「顧客」に対する感情労働はどうだろうか、国内の日本人客なら良いサービスを受けてリピーターになるという「対価」給付が期待されるが、外国人観光客の場合、日本人サービス業者の感情労働は、ほとんど「使い捨て」される。

 欧米では、感情サービスの対価給付は、チップである。チップなしで献身的なサービスをする日本人は、よく言えば「親切」だが、少々言い過ぎかもしれないが、「馬鹿じゃねぇの」感も払拭できない。

 インバウンドで日本人の感情労働は、価値の実現(価格化)ができていない一方、外国人にこき使われている。外国人は、円安・物価安の二重安だけでなく、日本文化や市場の特殊性に付け込んで、不当に日本人の感情労働を搾取している。にもかかわらず当の日本人は、「感動話」に感動し、来る日も来る日も「日本の素晴らしさ」に陶酔している。

 まさに、「馬鹿じゃねぇの!」の世界だ。日本市場では、一部の超高級ホテルとニセコ地域を除いて、一般の販売価格は、外国人客の日本人に対する「搾取価格」になっている。

 外国人観光客は、「日本のレベルが違う」と讃える、レベルが違うのなら、もっと払え!不当廉売の日本は、同胞が搾取されても「日本はすごい」と自己満足・自己陶酔しているとは信じられない。不当廉売なら、独占禁止法で問題になる。しかし、日本のインバウンド不当廉売がなぜ問題にならないのか?それは遥かに原価割れになっていて不当廉売の被害者が自分だけであるからだ。

 ベンツのSクラス新車を300や500万円で売っても、BMWもレクサスも文句を言わないだろう。ベンツのSクラスが背伸びするカローラ客層を食い潰しているからだ。勤勉故の剰余価値が搾取されても勤勉の美徳に自惚れするのは、奴隷以下だ。

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