国境なき日本料理、世界の食卓での扱われ方

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 マレーシアは美食の国ではあるが、美味しい和食が少ないのが玉に瑕。特に私の住むスレンバンは田舎町で、まともに食べられる和食は皆無。そのため、上海出張中はリベンジを兼ねて連日の和食。

上海-虹橋「お箸」

 虹橋のこの店「お箸」は、はじめてだが、おすすめ。ちょっと割烹風の居酒屋で、板前は全員中国人。素材の扱いも味もいい。何よりも量が多い。刺身は白身以外は厚切り。なんとサービスしてくれた中トロまで超厚切り、信じられない。どうも中国人客のお好みらしい。

上海-虹橋「お箸」

 虹橋周辺は、和食激戦区。どちらかというと、まずい和食を探すのが難しいくらいだ。職人の腕前だけでなく、食材の選び方も以前に比べて格段に進歩し、レベルが上がっている。福島核汚染水問題で、中国は日本の水産品輸入を全面中止している。その影響はどうかというと、ほとんどないと認識できる。

上海-虹橋「お箸」

 代替の調達チャンネルが見つかっているということだ。これだと、今後いざ輸入再開しても、日本産が中国市場に再参入できるかというと、そう簡単ではない。日本料理の食材は何も日本産にこだわる必要がない。中国の事例が世界に認知されれば、日本の食材輸出に長期的なダメージを与えかねない。

 日本料理の調理技術も食材も、その国際化が進んでいる。ただ、名誉以外に、国境なき日本料理の恩恵を日本人がどのくらい受けられるのかというと、限られていると言わざるを得ない。その原因は繰り返してきたように、文化の「発信」に力を入れすぎて、現地消費者の「受信」に無関心だったからだ。

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