中国は自滅するか、エドワード・ルトワック氏の一冊

 ここ数年中国関係の本が氾濫する中、すっかりマンネリ気味になった私は最近、友人に強く強く勧められて読んでみたのは、エドワード・ルトワック氏の「自滅する中国/なぜ世界帝国になれないのか」

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 またまた挑発的な見出しで、あまり期待していなかったが、読み出すとすぐそのユニークなアプローチに惹かれた。パラドックス的(逆説的)ロジック、私自身も愛用しているコンサルのツールの一つであって大変親近感をもった。ただ、氏はペンタゴンに近い論客で全体的に米国の国益に立った観点が多いことに留意したい。

 ルトワック氏は、 台頭する中国をかつてのドイツ帝国に重ね合わせ、いかに周辺国の防御や反発を引き起こすか、そのメカニズムを丁寧に説いてくれた。経済成長に歩調を合わせて行う軍備拡張が正比例で増大すれば、周辺国の反発は必至である。日本が東南アジア各国を煽って中国封じ込めを狙うという論者もいるが、国家はそれぞれ各自の国益があって煽がれて簡単に共同陣営を組めるはずがない。中国包囲網というのはある意味で時代の流れとともに形成される一種の自然現象ともいえよう。

 そこで、経済発展すればするほど、周辺からの警戒や反発が強まるという「逆説的なロジック」が成立する。経済発展するだけで自制機能があればいいのだが、それは現状の政治体系のなかではなかなか難しいことも指摘されている。

 さらに文化面の考察も鋭くなかなか秀逸である。中国は漢民族同士に通用する古典的な文化的背景に基づき構築するいわゆる戦略を、他国や他民族に対しても適用できるという誤認をルトワック氏が指摘する。これはまさに自己中心的な中華思想がいかに頑固で他人目線や他人感覚を失った(最初から身についていなかったかも)ところで、逆説的に戦略の失敗を招来するのであろう。

 私自身の感覚では、中国は体系的な戦略よりも、スポット的な戦術あるいは謀略的なアプローチに長けているように思える。特に、「逆説的なロジック」あたりが中国の最大な不得意である。まさかそんなことはありえないのだが、もし、私が中国に提言するのなら、「大国だからこそ、小さくなっているんだよ」といってもきっと一蹴されるのであろう。

 鄧小平はある意味で戦略的な目線をもって「韜光養晦」の外交原則を打ち出した。弱いうちには笑顔を作ってでも他人に頭を下げ、じーっと我慢するんだよ。将来いつか力がついて強くなる、その日までずーっとこうするんだと訓示した。ただ一つだけ、「強くなる日」の判断基準を明示しなかった。それがどうやら、中国の後続リーダーたちがGDPの数字をそれに置き換えたのだった(一般的に2009年が「韜光養晦」政策の転換点とみられている)。

 「自滅する中国」。少々煽情的な見出しだが、少し補足すると、こういうロジックだと思う――。中国崩壊することがあるかどうか分からないが、中国を崩壊させられるような国が存在しないことは分かる。だから、もし、崩壊するのなら他者によるものではなく、きっと自滅であろう。

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