社会主義と儒教、中国とベトナムの共通点で考える企業経営

 今夜、クアラルンプール発のベトナム航空でハノイへ出発。明日はハノイ日航ホテルで、日本人企業経営陣向けに「ベトナム人事労務諸問題と解決セミナー」を行う。

 「中国とベトナムでの経営や人事労務管理の共通点を知りたい」「中国での労務管理の先進事例を教えてください」・・・。セミナーの事前質疑にこのような要望が多数あった。

 中国とベトナムの共通点といえば、社会主義(共産主義)と儒教。マレーシアに移住し東南アジア業務も手掛けてから、基本的に人事を3つの系統に分けて考えるようになった――儒教系、仏教系とイスラム系(一部儒仏が絡み合っているところもある)。儒教は宗教よりも一つの哲学系統である。諸子百家時代に法家が儒家に負け、儒教が中国社会と周辺文化圏のイデオロギーになり、今日においても絶大な影響を与えている。

 企業経営や人事について基本的なところは、イデオロギー、価値観、思考回路の問題である。従業員の自律形成を目指す上でこのへんの課題をクリアしないといけない。

 たとえば、儒教の「忠」と「孝」。中国もベトナムも「忠」よりも「孝」を大切にするが、日本人はどうしても「忠」を「孝」に優先するので、会社に対する忠誠心という基本概念の段階でまず大きなギャップを作ってしまうのである。

 さらに、中国やベトナムの「孝」は共産主義思想の影響を受け、いささか変質してしまっている。特に中国の場合、文化大革命によって一度「孝」よりも「忠」(政治的要素)を上位に持ちあげ、イデオロギーの混乱を引き起こし、その後遺症が今日まで引きずっている。そこで改革開放やドイモイでいきなり資本主義のメカニズムを導入すると二転三転、混乱に混乱を重ね、大混乱状態にしてしまったのは中国とベトナム。

 「人事を制する者は、経営を制す」。私が中国の経営現場で常に言っていることはベトナムにも適用しそうだ。

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