投資の話(2)~出口なき入口、リスク触れない悪しきアドバイザー

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 誠実そうな投資アドバイザーがいたから、投資を決めた。それでいいのか。「誠実そうな投資アドバイザー」=「良い投資アドバイザー」か?

 良い投資商品よりも、まず良い投資アドバイザーだ。良い投資アドバイザーの見分け指標はやはり、投資リスクをめぐる入念なチェックと情報開示である。投資に関わる3主体――投資者、投資アドバイザー、投資商品、一つも欠けてならない。

第1段階、投資者チェック

 私自身の体験談になるが、某外資金融機関が投資商品を販売する際に、まず消費者(投資者)にリスク耐性のチェックを行う。

 まず、保有資産の総額・構成、負債状況、収入源などを調べ、投資に回す資金の性質を明確にする。同じ500万円の投資なら、総資産1億円の人と1000万円の人にとっての意味が違う。負債や収入の状況も加え、アセットとキャッシュフローの両方から消費者の財務基盤を把握する。

 次に、投資の目的と商品のリスク度のマッチング。たとえば、5億円も資産を持っている人で、500万円を原資に一攫千金のつもりで高リスク商品に手を出してもさほど問題がないのかもしれないが、年収500万円の人で、コツコツ溜め込んだ年収分の500万円を老後に備えた自分年金に投資するなら、話が違ってくる。

 要するに、いくら持っているか、いくら稼いでいるか、いくら投資するか、何のための投資か、どのような投資にするか、どこまでリスクに耐えられるかという、消費者のリスク耐性を定量的レベルで表示する。これによって、消費者本人が適正な自己像を見せ付けられなければならない。

 私が以前経験した上記の某外資金融機関では、このような消費者リスク耐性チェックが録画録音付きで行われていた。昨今、一部の低素質投資アドバイザーでは、簡単なリスク耐性チェックすら皆無だったケースも決して珍しくない。到底プロフェッショナルとは言いがたい。

第2段階、投資商品チェック

 さあ、ここからはいよいよ投資商品の選択段階に入る。投資アドバイザーがどのような投資商品を推奨するか。自分にとって販売仲介手数料の高い「売り得商品」ばかり薦める不良アドバイザーもいる。中に消費者(投資者)のリスク耐性に適合しない商品も混在したりする。ここまでくると、「アドバイザー」でもなんでもない。ただの販売ブローカーだ。

 投資商品のリスク開示をどこまでやっているかが、投資アドバイザーの良し悪しを判断する指標だ。運用シナリオを、上中下の3段階に分けて描く。うまくいったら収益はこれだけ上がるが、損益とんとんの場合定期預金のほうがまだましだという場面もあるし、最悪のケースは元本割れで投入資金のほとんどが失われることもあるとか・・・、ここまで説明してくれるかどうかである。

 投資商品について、販売側と消費者側に大きな情報格差が存在する。投資アドバイザーが自分の販売仲介手数料を考えていたら、リスク情報をどんどん隠してしまう。なかに、リスク情報自体すら把握していない馬鹿アドバイザーも存在するので、要注意だ。

 投資アドバイザーの間に、「リスクを知っていて言わない、ありがちなアドバイザー」と「リスクを知らない馬鹿アドバイザー」という2種類がいるほか、一番悪質なのは、「核心的なリスクを隠して、どうでも良いような軽いリスクをいい、良識あるプロフェッショナルを演出する確信犯アドバイザー」である。

 良い投資アドバイザーとは、つねに、「真のリスク」に触れながら投資者との対話を深めていける人である。そういうアドバイザーは世間になかなかいないのが実情ではないだろうか。

 投資の価値もリスクも、「出口」にある。それが故に、「入口」をくぐる前にまずは「出口」を考えるのが当たり前だ。しかし、恐るべき事実をまず知っておかなければならない。投資者・消費者にとっての価値実現は「出口」だが、投資アドバイザーにとっての収益源は「入口」なのである。

 投資者チェック、投資商品チェック、それ以前にまず投資アドバイザーのチェック。三位一体のチェック体制がなければ、良い投資がとても望めない。いや、たまに運よく当たることもあろうが、神様仏様にひたすら感謝するのみだ。

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