日曜夜、ベトナム出張を終え、クアラルンプールに帰来。マレーシアは、もうハリラヤ(断食明け)一色。1か月に渡るラマダン(断食)が明け、待ちに待ったお祝いの日がやってくる。これはもう、ムスリム(イスラム教徒)にとってみれば、正月とお盆がいっぺんにやってきたようなものだ。
このイスラム教の最大な祝日で、どんどん儲かっているのはなんとマレーシアの華人たちである。ハリラヤ・プロモーションのために、華人の商人たちが早くも数か月や半年前から準備を始めるのだ。ムスリムのマレー人の消費傾向や嗜好を誰よりも知っているのは彼たちだ。
正月といえば新しい服。新調した服装で出かけるのが何よりの楽しみだ。マレー系客向けのテーラー、服の仕立て屋の多くは華人が経営している。
マレー系ムスリムは、家族の絆が強い。正月の一家団欒、その家族の絆の象徴を自慢するためにも、家族全員が同系列色・デザインの服を新調する需要がある。これは既製服の小売店舗ではなかなか対応できないので、仕立て屋が人気を呼ぶ。口コミの紹介が広がると、ビジネスは見る見るうちに拡大していく。紹介単位は一家族なので、受注量が大きい。ペアルックはカップルではなく、家族単位の「ファミリールック」である。
金、ゴールド。これも凄い。金装飾・アクセサリーを好むのは、マレー系も中華系も同じだが。中華系は金を財産として購入してストックするが、マレー系女性は金を消費財として買う。
マレー系女性は金装飾を買うと、すぐに身につける。ファッションとしてしばらくつけていると、飽きが来る。飽きが来たら、金専門店に売ってまた新しいのを買う。下取り価格で2~3割をロスするが、ファッション代としての償却と、彼女たちが考えているようだ。
このように、マレー系ムスリムの消費市場を華人が牛耳って多大な利益を手に入れる。なんといっても、消費者目線というところは、日本企業が平均的にあまりにも鈍感である。
昨今の日本ではイスラム市場といえば、「ハラール認証」。まったく愚の骨頂。正直、「良いもの」はハラール認証なんかなくても売れる。さらにハラール認証を不要とする商売もゴロゴロと転がっている。なのに、日本企業の多くは蚊帳の外。おかげでハラール認証コンサルと名乗る怪しげな代理屋や認証機関が大儲けしているだけだ。
最後に一言補足。「良いもの」とは何か。「品質の良いもの」ではなく、売れるものが良いものだ。