ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ、都市国家の付加価値戦略

<前回>

 シンガポールの新名所、「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」の視察に出かける。人工的なアトラクションには個人的に興味皆無だが、シンガポールの都市戦略を考察する上での価値があるので、決行した。

 巨大な室内植物園。何よりも気温と湿度、シンガポールの高温多湿と対照的に、2つの巨大なドーム内では常時気温が23~25℃、湿度が60~80%とさわやかで冷涼な空間が保たされている。この鮮烈なコントラストに即時反応する体は否応なくただひたすら「快適」という1つのシグナルを出し続ける。

 莫大な電力エネルギーを消費しているのではないかというと、ご心配なく(?)、「エコ」が何よりもこの植物園のコンセプトである。

 ドーム内の空調には、バイオマス発電所が役割を果たしている。シンガポール国内で排出されている間伐材や農業廃棄物がバイオマス発電所に集められ、発電に利用されているという。

 さらに、発電時に発生する温水は、熱交換器に送られ、熱帯の空気を冷却・除湿してドーム内に冷気として送り込むのに使われているという仕組みだ。

 とにかくエコをやっていることは間違いない。ただ、いくらエコであっても、この巨大ドーム自身は絶えず多量なエネルギーを食い潰している。この事実は変わらないだろう。南アフリカやカリフォルニア、南米、地中海など各地から取り寄せた植物を赤道直下のシンガポールで元気に育てるために、どれだけのエネルギーやコストがかかるのだろうか。

 プロジェクトは成功しているように見える。都市全体の戦略としても秀逸である。資源のないシンガポールにとって、アトラクションによる国家の振興策は王道なのかもしれない。

 シンガポールという都市国家から「緑」を取り除いたら、これほど無機質な場所も地球上少ないだろう。この本質を誰よりも先に見抜いたリー・クアンユー氏が国土の緑化を国策として早い段階で取り入れた。これはまさに英断だった。そしていま、ガーデン・シティという美名をもつシンガポールはいよいよ、ガーデンのアトラクション化に乗り出し、さらなる付加価値増に取り組み始めた。大したものだ。

<次回>

タグ:

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です。