ビクトリアフォールズにやってきたのはいうまでもなく、ビクトリアの滝を見るためだ。
南部アフリカを流れる大河ザンベジ川の中流、ジンバブエとザンビアの国境に位置するこの巨大な滝。北米のナイアガラの滝、南米のイグアスの滝と並ぶ世界3大瀑布のひとつで、1989年に世界遺産に登録されている。
世界遺産への登録はほぼ間違いなく経済効果をもたらし、観光業の隆盛を意味する。歴史的蘊蓄もさておき、巨大滝とかそういった要するにビジュアル的なものとなれば、それはそれは老若男女をとわず世界中から観光客が殺到する。誰もが楽しめるからだ。
ビクトリアの滝はまさにその代表例である。滝を眺めるスポットには番号をつけられている。番号をたどって逐次見学させるにはもってこいのやり方だ。通常の「順路方式」ならやや外れても気にしないが、番号となれば飛ばすわけにはいくまいと観光客は忠実に番号順一つひとつを追ってスポットを制覇していくのだ。
制覇とは、何よりも写真撮影だ。私が観察・集計したところでは、1つのスポットにおける観光客の平均滞在時間は2~3分、その時間のほとんどが撮影に費やされている。つまりは、「レンズ越し」の観光である。
滝の観光ツアー。その標準版は半日ものである。正味が2時間ほどの滞在なら、巨大な敷地にかかる徒歩移動の時間を除けば、1つのスポットに費やせる時間は2~3分が限界だ。中に半日ツアーで陸上と空中(ヘリコプター観光)の両方を織り込んだパッケージもあるから、殺人的なスケジュールになる。
事前に距離や移動所要時間を下調べしたところ、滝の観光はツアーをやめてガイドなしの自力で回ることにした。自分のペースでゆっくり回れるからだ。朝早く8時過ぎに入園して出てくるのは13時前だった。4時間をかけて、レンジ抜きの肉眼観光も存分に楽しめた。
いやいや、滝は凄い。最大落差約110メートル、滝幅約1700メートルというスケールは大きい。毎分数億リットルもの水が猛烈に流れ落ち、水煙は高さ150mにもおよび、轟音が響き渡る。その轟音は直線距離1キロほど離れた私が泊まるホテルの客室からも聞こえ、一部の水煙も見えるほど凄い。
そのさまを形容して、現地では古来から「モシ・オ・トゥニャ(雷鳴の轟く水煙)」と呼ばれている。観光用のパークの名称もそのまま使われている。
滝沿いの遊歩道を散策しながら、徒歩で滝を間近に見ることができるが、舞い上がる水煙を浴びなければならない。水しぶき程度ではない。一部の場所では、台風襲来時の豪雨状態に近い。貸出用のレインコートを着用しても襟元や足元がびしょ濡れ、顔はシャワー状態。時には風向きが変わると横殴りの雨に容赦なく打たれ、とてもカメラなどを構える余裕がない。
凄い。ビクトリアの滝。