布マスク2枚を国民に配布、なぜ嘲笑されたか?

 「布マスクには他者からの感染を防ぐ効果はまったく期待できない。他人に移さないという目的を考えれば、『つけない』よりはマシ」(4月2日付、朝日新聞記事『布マスクは有効?WHOは「どんな状況でも勧めない」』より主旨引用)

 この文脈からみれば、政府の意図がこうである――。

 ① 不織布製のサージカルマスクを医療現場に回すために、一般市民に「二流」あるいは「三流」の布マスクを与える。

 ② 「感染受信」に効果がなくても、少しくらい「感染発信」を防げるなら、蔓延のカーブを下げることができるかもしれない。

 ③ マスクをつければとりあえず安心だという国民の群衆心理を引き起こせば、政治的に有利だ。

 そんなところではないだろうか。情報の非対称性を利用した統治手法は、一定の合理性を有する。ただ、国民側の情緒的な反応(おいおい、布マスク2枚だけとは何事だ)を見落としてしまった。技術的な合理性があっても、芸術的な仕上げが欠落した失敗作であった。

 「布マスクは自分を守るものではない、他人を守るものだ」と、はっきり国民にいえばいいのに、まあ、いえないだろう。

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