リストラされた客室乗務員は外食業に、美しきサバイバル像の数々

 コロナ禍で航空会社はリストラに踏み切らざるを得ない。職を失ったマレーシア人客室乗務員ディディさん、ナビルさんとシディさんの3人が苦難を乗り越えて、Dhapor Pramugariというレストランを開業した。

 とても感動的な話だ。レストランのSNS書き込みにこのようなコメントがあったので、引用したい――。

 「傘は完全に雨を遮ることができません。でも、傘があれば、我々は雨の中で真っすぐ立てます。それが自信です。自信は我々を勝たせてくれませんが、生き延びるための力を与えてくれます」

 ムヒディン首相が演説のなかでこの3人の名前を読み上げ、讃えた。2020年9月24日付のマレーシア華字紙南洋商報が、これ以外にも、客室乗務員だったナズナーズランさんが夫と二人三脚で、洗車・自動車メンテナンス店を開業した事例や、機長からフード配送員に転身したハイルアズさんの事例など、コロナ禍下の失業と戦う人々の事例を写真付きで紹介した。

 生きる力、ただただその一言。リストラをした会社が悪いとか、雇用し続けた会社が良いとか、そうした善悪の次元を超えれば、人間の生きる力という美学――いや実学でもある――が見えてくる。人間は生来、自己保存の本能を有し、その本能から「生きる力」が生まれ、厳しい環境であればあるほど「生きる力」、つまり自助の力が増強していくのだ。

 菅義偉官房長官(当時)が首相就任にあたって「自助・共助・公助」という標語を掲げた。すぐに「自助発言」に一部批判の声が上がった。立民の枝野幸男代表は「政治家が自助と言ってはいけない。責任放棄だ。政治の役割は公助だ。」と述べた。果たしてそうだろうか。

 その論理でいけば、マレーシアのムヒディン首相が国民の自助を讃えることは、「政治家の役割を果たせていない」ことになってしまう。

 老子の格言「授人以魚不如授人以漁」、人に授けるに魚を以ってするは、人に授けるに漁を以ってするに如かず。「人に魚を与えれば1日で食べてしまうが、人に釣りを教えれば一生食べていける」という意味である。大変動の時代、明日が見えない時代だからこそ、国民に魚を与えるよりも、漁を教えることがはるかに大切で、真のリーダーの責任ではないだろうか。

 経営者も然り。社員にサバイバル力、生命力を与える。これは、経営者の責任であり、最大かつ最上の親心だ。 たとえ会社がいつか潰れても、社員の人生まで潰れたら困る。経営者は社員を守るというが、社員に自助力を身につけさせるのが最善の守り方ではないだろうか。

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