日本学術会議会員任命拒否、労務理論学会抗議声明に対する問答

 日本学術会議会員の任命拒否について、私が所属する「労務理論学会」理事会から、内閣総理大臣宛に抗議声明を提出した。私は政府の所為に何ら不当性もないと認識しているため、一会員として理事会に抗議声明不賛同の旨を申し入れ、抗議声明の理由の説明を求めた。以下、学会と私の書面問答である――。

【労務理論学会からの理由説明】

 (1) 1983年の日本学術会議法改正にて任命制度が導入された際、国会にて政府 は、総理大臣による任命は 「形式的任命」であると説明しており、1983年以降、任命拒否は行っていない。にもかかわらず、今回具体的な説明がなされないまま任命拒否を行なったことは法律違反の可能性がある。

 (2) 日本学術会議法に則り「優れた研究・業績を有する」(第十七条)として推薦された一部会員候補者について、政府がその理由を明らかにせず任命を拒否したことは、「研究・業績」の水準以外で選別されたことを疑わざるを得ない。

 (3) このように日本学術会議が推薦した一部会員候補者について理由を説明することなく任命を拒否することは、政府による学術会議の判断への介入であり学術会議の独立性を毀損することになる。

 (4) 日本学術会議法の冒頭部分にかかげられた「 科学者の総意の下に、わが国の平和的復興、人類社会の福祉に貢献し、世界の学界と提携して学術の進歩に寄与することを使命とし、ここに設立される」との設立趣旨に照らし、このたびの推薦候補者の任命拒否は、日本学術会議の独立性だけでなく、科学者・研究者全体の学問的自主性の毀損ともいえ、学問の自由の侵害を危惧させるものと考える。

【立花からの再質問】

 1. 「任命拒否は法律違反の可能性がある」という指摘については、当事者の双方は、最終的に訴訟で解決することができる。むしろ任命権に関連して学術研究の題材にもなり得るので、今回の事件を例に、来年の学会全国大会における報告テーマとして検討しております。

 2.憲法、日本学術会議法その他関連する諸法等を網羅しての研究、分析は膨大な量に及びますので、ここでは理事会から提示された日本学術会議法前文と同法17条の関連性等について質問させていただきます。17条所定の「優れた研究・業績を有する」として推薦された候補者は、その研究や業績が同法前文の趣旨に反する場合は、(1) 推薦されるのか?(2) 推薦された場合、政府はそれでも任命義務を有しているのか?(3) 後日推薦の誤謬性が認められた場合、推薦責任なのか?任命責任なのか?(4) 推薦された候補者の資質の適正性に対して推薦者以外の監査機能はあるのか?

 3.「政府による学術会議の判断への介入であり、学術会議の独立性を毀損することになる」との指摘ですが、質問させていただきます。学術会議の自主性・独立性がある一方、(1) 自律性の検証は不要なのか?(2) 学術会議の恒久的無謬性がどのように担保されているのか?

 4.抗議声明中に、「学問の自由を脅かすもの」との記述がありますが、質問させていただきます。憲法23条の「学問の自由」は一般的に、学問研究の自由、研究発表の自由、教授の自由が含まれているが、どの自由をどのように脅かし、あるいは侵害しているのか?

【再質問に対する労務理論学会からの回答】

 学会理事会は、私の再質問に対して回答できないとした。なお、その理由が記されたメールを公表することも、拒否された。

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