賃金上がらないのは、「人本主義」のせい!

 日本人の賃金が上がらないのは、人本主義のせい。「人本主義」とは何か。一般的に「人間を大事にする経営」と理解されている。しかし、それは正しい解釈ではない。

 戦後の日本は、短期間に空前の経済的繁栄を経験した。その背景には、相対的に非階層化され、民主化された企業社会が形成されたことがある。すなわちヒトを企業経営の原理と考える、人本主義というシステムである。

 普通は「資本主義」という。なぜ「人本主義」に置き換えられたのか。「資本」と「人本」の関係とは何か。池田信夫氏がその著作『失敗の法則』のなかでこう述べている――。

 「(人本主義とは)『人間を大事にすること』ではない。…希少な土地の生産性を高めるために極限まで長時間労働するものだった。それは資本を節約して労働を浪費するシステムなのだ」

 つまり、人本は資本の代替品に過ぎない。「人財」という言葉もそれを表現している。ヒトが資本や財である以上、節約して使うはずだが、なぜ「労働を浪費する」のか。それは終身雇用制度の下で必要投入を超えた人数がいて、浪費せざるを得ないからだ。

 労働生産性の向上はタブー。一定の収入を保障するために、残業を作り出してやらざるを得ない。言い換えれば、労働生産性低下は日本企業の宿命であり、いや、使命でもある。

 だから、給料は上がるはずがない。数十年も賃金上昇がないのは当たり前だ。賃上げの前提は、労働の浪費をやめること、労働生産性の向上、つまり人減らし、リストラである。

 日本のIT産業が立ち遅れているというが、日本人が馬鹿でITに疎いからではない。ITやAIは労働生産性の向上をもたらし、人本主義に反して人本主義の天敵であるからだ。

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