中国のハワイ夢想

<前回>

 「ハワイといえば、何?」

 私の場合は、コーヒーというが、ほかにもたくさんあるだろう。アロハスピリットの象徴とされるレイ、詠唱とジェスチャーによって物語を伝える踊りであるフラ・・・さまざまな伝統と文化が息づいている。

 「中国のハワイ、海南島」、最近流行語の一つになっている。

 「じゃ、海南島といえば、何?」、私が中国人に聞くと、

 「中国のハワイ」、このような回答が帰ってくる。

29252_204年、ハワイ島の海

 海南島の海は、ハワイに負けていない。民族文化もある。何か一つでも二つでも、「海南島ならでは」をなぜ作らないのか。それよりも、せっせと大型観光ホテルばかり建てて、「中国のハワイ」と看板まで他人から借りるのか。

 私が好きな料理の一品である「海南鶏飯」も、海南島の立派な食文化だ。以前、ロイター時代のシンガポール華人の上司も、海南出身で、週に一回はこの一品を食べずにいられないという郷土愛の強い方だった。紛れもなく文化である。

 少し前、私がブログで京劇のことを書いて、中国が文化をもっと重視すべきだと言ったところで、中国人の読者から、「中国は文化をやっている暇がない、経済成長が最優先だ」と反論が来た。「文化」と「経済成長」を切り離して考えるようだが、まったく、その逆だ。文化の経済価値をもっともっと生かしてこそ、環境に優しい金の稼ぎ方である。

 インドネシアのバリ島といえば、リゾートの元祖だが、実は、バリ島の海がそんなに綺麗なわけではない。私が何回もバリ島で休暇を過ごしているが、海に実際に入ったのは1回だけだった。けれど、なぜこれだけ人気が出ているのか。色々原因があるが、文化的要素を無視できない。バリ島では、海から離れた山奥にウブド(Ubud)という村があって、いまや、ガムラン音楽、バリ舞踊、バリ絵画など、芸術の村として一大観光地、リゾート地になっている。

 「海南島」といえば、「海」。しかし、海は世の中いくらでもある。「海」という資源だけを売り物にするには、中身が伴わないし、大きな金稼ぎができない。

 海南島は中国のハワイ、上海の浦東は中国のマンハッタン、北京の中関村は中国のシリコンバレー、マカオは中国のラスベカス・・・

 だったら、中国は、アジアのアメリカ?

 「中国特色のある〇〇」、中国でよく聞かれる言葉だが、実際はどうだろう。それこそ、中国の特色をどんどん打ち出すべきではないだろうか。

「海南島は、世界に一つしかない海南島。海南島は中国の海南島」と胸を張って言ってほしい。その日を、クビを長くして待っている。

<終わり>

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