毒餃子を出さないために、企業は何をやればいい?

 1日10時間労働の週休1日。臨時従業員に基本給や残業手当などの賃金制度はなく、「いくら働いても月額1200元以上はもらえなかった」。

 劣悪な雇用環境、待遇の格差に不満を抱いていた呂月庭容疑者は、報復措置を取った。中国製冷凍ギョーザ中毒事件で犯行を供述した製造元の元臨時従業員の横顔だ。

 容疑者の犯行は容赦できないものの、寒村出身者の労働者に期待と希望を与えられなかった企業に、責任はないのか。

 中国の安賃金時代は、終止符を打たれようとしている。一部の沿岸地域では、「所得倍増計画」がすでに打ち出されている。それに対応できるか、日本企業。賃金が上がれば、利益が食いつぶされ、企業は赤字に転落する。中国で生き残りをかける日系企業には、二つしか方法がない。

 一つ、労働制生産性の向上。いまだ中国といえば「人海戦術」の発想をもつ日本企業の経営者がいる。この思考回路を抜本的に切り替えなければ、中国ではやっていけない。

 もう一つ、人事戦略と制度の刷新。労働制生産性の向上は、掛け声やシステムの導入だけでは無理だ。エンジンが必要だ。エンジンとは、従業員のモチベーションだ。賃金や待遇に納得せず、将来に希望を持てない従業員では、生産性が上がるはずがない。

 繰り返すが、賃金の高低よりも、従業員は自分のもらっている賃金の額と自分のパフォーマンスを見て、納得するかどうかだ。

 中国人労働者は、決して、法外な高額賃金を求めているわけではない。「納得性」を求めているのだ。

 「張さんが2000元なのに、同じ仕事をしている私、なぜ1500元なの?」、このような質問の回答に苦しんでいる総経理は多いはずだ。そこで、辻褄あわせで適当に応酬するだけでは、当然納得されない。納得しないまま、良い仕事ができない。なかに、「悪」の道に走り出す人も現れる。

 人件費コストの膨張を抑えながら、従業員の一人ひとりの納得性を高め、労働制生産性の向上を実現する。夢のような話だが、必ず実現できると私が断言する。

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