戦争はいつ起きるか?開戦前夜の空気を嗅ぎつけて

 日本にいる身内・親戚には戦争等のリスク、自己防衛策について説明したところで、「戦争はいつ起きるか」と聞かれた。「わからない、いつ起きても大丈夫な状態にしたほうがベスト」と助言した。戦争はいつ起きるのだろうか。当事国にとっていつ起きたほうが自分に都合がいいのか。――当事者の目線で世界を眺め、考えよう。

 まず、軍事的準備

 中国の軍事力はいずれアメリカを追い抜くだろう。時間の問題だ(2030年頃を想定したい)。そういう意味で、中国にとってみれば、代理戦争でなく米軍と直接戦うことを前提にした場合、今すぐでなく、あと数年待って準備を万全にしたほうが理想的だ。だから、時間稼ぎで場をもたせるよう、いろいろと工夫している。

 逆にアメリカからすれば、中国の先延ばし策には騙されまいと、なるべく戦争を早くやったほうがいいわけだ。ただし、自分でやりたくないから、台湾や日本に代理戦争を戦わせ、中国の戦力を消耗し、中国の軍事力の増大を食い止め、米中の直接戦争をできるだけ遅らせる。ウクライナの代理戦争でロシアの戦力を消耗するやりかたと同じ手口だ。

 次に、経済的準備

 戦争になれば、経済制裁、サプライチェーンの切断・寸断が不可避だ。そのへん、世界の工場になった中国は強い。これに対して、アメリカは着々と「非中国サプライチェーン」の整備に着手している。ハイテク分野では、台湾の半導体工場を米国に移転させたり、半導体法案で中国に規制を加えたりする一方、労働集約型分野では、中国の代わりにメキシコへのニアショアリング(近隣国に事業を移転する)に取り組んでいる。

 米国の対中半導体規制について、日本もオランダも参加させられる。東京エレクトロンやASML、中国の売上が切られると、総利益も減る。総利益が減れば、開発資金(原資)も減り、開発が遅れる。すると、中国がより早いスピードで追い上げる。中国は先端半導体技術の開発に巨額の投資を注ぎ込み、半導体サプライチェーンの内製化に向けてスピードアップしている。挙国体制だから、おそらく5年くらいで欧米勢を追い抜くだろう。

 労働集約型製造業分野では、とりわけアジア地域の場合ベトナムやASEANへの移行は徐々に進んでいるものの、短中期的に完全な「非中国サプライチェーン」を整備するのは不可能だ。これは中国に有利だ。

 そうした意味では、戦争は2030年までにほぼ確実にあるだろう。それがよく言われる「2027年台湾侵攻説」の根拠ではないだろうか。ただそこまで待てない事情が生じたり、あるいは準備が予定より早くできたりする場合、繰り上げることもあるだろう。世界が「2027年説」で騒いでいるので、中国にとってそれより早い時期に繰り上げた方が賢明ともいえよう。

 では、いつ?

 2024年5月20日は、台湾総統選挙だ。新総統の出方次第、中国は戦争(武力統一)に踏み切るかどうかの最終判断を下すだろう。すると、戦争は2024~2027年の間に起きる。ただ民進党から国民党への政権交代があったとしても、国民党の総統がアメリカの意志に反して中国と独自の「和平交渉」を進められるかというと、必ずしも楽観できない。

 さらに、アメリカは絶えず中国を挑発している。マッカーシー下院議長の台湾訪問がすでに予定として公表されている。一連の挑発に耐えられるかどうか、中国国内のナショナリズムもあって習近平のかじ取りが非常に難しい。予測はまったくできない。

 習近平自身でさえも予測できない。だから、とにかく明日に開戦しても対応できるよう、中国は急ピッチで戦争準備を進めていることだけは間違いない。

 台湾戦争ないし第三次世界大戦はいつ起きてもおかしくない。だから、我々一人ひとり、個人や家庭もそのつもりで早急に準備に取り組みたい。日本国内も財政の悪化やインフレが止まらず、内憂外患が交差する中、太平洋戦争開戦前夜の空気が充満している。タモリいわく「新しい戦前」とはそういうことだ。

 平和は願うものであり、信じるものではない。平和には信じる価値がない。

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