台湾戦争介入で日本人は地獄を見る(2)~正義も命も失う

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 経済面について述べてきたが、ここからは政治、外交、軍事面を見てみよう。

 戦略国際問題研究所(CSIS)の台湾戦争シナリオによれば、日本が在日米軍基地の使用を容認しない場合、米国は4隻の空母を失う。1隻の空母には5000人の米軍が乗っている。これだけで2万人の米国人兵士が死ぬ。日本が無傷の代わりにこれだけの米国人を犠牲にする。アメリカはこんな馬鹿なことをすると思えるか?

 まずは属国日本の犠牲が先だ。日本人から死んでいくに決まっているだろう。自衛隊が戦場へ出なくとも、日本の米軍基地が使われた時点で、日本の戦争介入とみなされる。沖縄基地だけを使っても、日本の戦争介入の意志や姿勢に変わりなく、中国は日本全土の米軍基地と関連施設を攻撃してきてもおかしくない。

 これは「台湾有事は日本有事」の意味だ。戦火が日本本土に及び得るということだ。場合によっては、日本有事が先にやってくる可能性もある。

 1972年に締結された日中共同声明の第2項は、日本政府は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と規定し、さらに第3項では「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第8項に基づく立場を堅持する」と書いた。

 日本が台湾戦争に介入した場合、これはつまり日本政府が日中共同声明を破棄することを意味し、即ち対中侵略戦争2.0、第二次日中戦争を日本が発動したことになる。中国はそう捉えるだろう。戦争介入にあたって、まず大義名分が必要だ。「台湾有事は日本有事」といった一方的かつ抽象的な論理だけでは成り立たない。

 日本が台湾戦争に介入すれば、中国共産党政権がプロパガンダを行うまでもなく、中国各地ではたちまち過去最大規模の反日デモが発生し、日本大使館・領事館も日本企業も攻撃対象にされる。これは過去の反日史をみても容易に想像できる。純粋な反日ナショナリズムは、政権に矛先を向けさえしなければ、当局に容認、保護され、そして都合のいいように利用される。

 中国共産党政権が独裁支配で他国に対する侵略戦争を発動したならば、国際社会はそれを批判できる。しかし、対日戦争は日本による日中共同声明の破棄に起因し、中国の領土問題に絡み、中国国民の広範な民意に支えられているとなると、話が違ってくる。そもそも台湾の法的地位はウクライナと同一ではないからだ。

 「東京に核を落とせ」「小日本を滅ぼせ」「中華民族の大復讐」の横断幕が掲げられたところ、民意を汲み上げての対日反撃を中国政府が決定する。いかにも民主主義的な意思決定であろう。そこで、民意に起源する「新抗日戦争」が勃発。台湾戦争によって中国は台湾の「回収」だけでなく、第一列島線の完全掌握を目論む。そこに横たわっている日本は邪魔だ。この際、排除しようと。

 ウクライナ戦争では、ポーランドが挙国体制でウクライナを支援するのは、戦後のウクライナ西部領有を企んでいたからだろう。利益が伴わない戦争は存在しない。

 さて、日本は台湾戦争で何を得るのか?勝った場合、台湾の再領有か?保護領にするのか?それとも、単なる友情のためか?ただのボランティアや他国利益のために、自国民を犠牲にする国家は、国家といえるのか?もちろん民主主義国家だから、国民の総意で「我々が犠牲になってもいい」というのであれば、それは大いに結構なことだ。

 日本では、このような議論は一切なされていない。国会でも追及する議員は1人もいない。このままでは、日本は滅びる。中国の属国になる。もしや米中の二重属国になるかもしれない。

 太平洋戦争では、日本人は少なくとも祖国日本のために戦って死んだ。今度は、他国のために死んで自国を失う戦争に加わっていいのだろうか。

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