上海(3)~生煎包と小籠包の違い

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 上海で食べる。小籠包に続いて何といってもこれ、生煎包(生煎饅頭)。生煎は上海を代表するローカルフードで、これを知らない上海人はいない(若い人はどうだろうか)。日本語では 「焼き小籠包 」とも言われるが、それは間違い。同じ饅頭の部類でも、男と女くらいの違いがある――。

 小籠包が女性なら、生煎包は男性。

 小籠包も生煎包も食べると中から汁が飛び出すところは同じだが、その飛び出し方が違う。小籠包は皮が薄いだけに皮が汁に溶けるような、あるいは汁が皮を溶かすような一体化した融合感がある。しかし、生煎包は皮が厚く、汁が皮を突き破ってそれこそ飛び出す噴射感が口腔全体に直撃し、力強さをアピールする。いかにも男性的だ。

点心料理専門店「豊裕」の生煎包ををいただく

 具も、生煎包の方が荒く、重い。小籠包のような繊細さがない。厚めの皮と粗めの具、どちらも小籠包と対置される存在である。小籠包はとろける感が強く飲み込むに近い食べ方で十分だが、生煎包はしっかり歯を立てて咀嚼行為を求め、俗に言うと噛み応えがある。
 
 最後に、油っぽさの表現にも微妙な差がある。小籠包も決してあっさり系の食べ物とは言えないが、生煎包は表面に油でコーティングを施し揚げるため、露骨な油っぽさを視覚的に感じさせる。だが、面白いことに中華酢を付けて食べると、油っぽさと中華酢は小籠包以上に見事なマリアージュを演出してくれる。

 「中華酢」は、様々なチョイスがあるが、生煎包にも小籠包にも「鎮江香醋」に限る。鎮江産のバルサミコ型酢は、酸っぱいが渋くない、香りがあるが少しだけ甘い。色も味も透明感がある。包子から流れ出た肉汁で酢が徐々にスープに変身していく。私の場合は最後に残り酢を飲み干すのである。

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