さよなら米国、ハロー中国~メンツとお金の関係

 『中東: さよなら米国、ハロー中国』

 ――アルジャジーラ放送は2023年6月6日付で社説を掲載した。中東は、米国から中国に転向した。アフリカに続き、中東も中国側に転じたのである。次は欧州の分断、中国はすでに乗り出している。繰り返してきたように、中国を「親分」とする「もう1つの国際社会」が形成されつつある。

 しかし、日本人は現実から目をそらしている。

 2023年6月13日付の日経ビジネスOnlineが『年収400万円でも不満 ハノイ工科大学の「日本離れ」』と題した記事を出した。何回も言うが、ベトナムも含めて「親日」という言葉は存在しない。あるのは、「親金」「親力」のみ。中東の為政者も、ベトナムの学生も、同じ原理で動いている。

 金の切れ目が縁の切れ目。まさにその通り。日本人は未だに自惚れに酔い痴れている。自分だけが心底から「親米」一筋なので、他国も同様と思い込んでいる。

 お金、お金、なんでもお金の話を引っ張り出すと、いやな顔をする日本人がほとんどだ。日本人がお金の話を忌避するのは、お金が汚いものとされており、お金ばっかり語っていると、人格が疑われるからだ。要するに体裁、メンツが大事だということだ。

 世の中の最強とは、メンツもお金も要らない人だ。私はメンツは完全に要らないが、お金だけはちょっと大きな額なら動じてしまう人である。ただ欲の大きい私を動じさせる額もどうも相対的に大きいので、今の世界では少額のお金だけでもせっせと動く人たちが大勢いて、私にはなかなか勝ち目がない。故にほぼ「最強」に近い「次強」のところに、私はいる。

 逆に、世の中の最弱とは、メンツもお金も欲しい人だ。今、大方の日本人はそれに相当する――。頭は反中、財布は親中。「既当婊子、又立碑坊」――中国の諺、娼婦で体を売って稼ぎながらも、貞節を讃える碑を立てると。体を売って稼ぐのは、恥ではない。ただそれを貞節溢れるものにすり替えてはいけない。メンツもお金も欲しいとは、体裁が悪いだけでなく、大きな損もする。

 中東の為政者やベトナムの学生だけではない。欧州も亀裂ができつつある。実利主義先行で中国に転じる動きがすでに出てきている。たとえば、フランス。民主主義同盟という米欧の関係がいよいよ怪しくなるのは、欧州人がメンツを捨てて、お金に傾くという単純な構図ではない。欧州人はある本質を見抜いたのである――。

 アメリカは民主主義を掲げ、欧州などの仲間の利益を犠牲にしながら、自分だけががっぽり稼いでいるのではないか。つまり、アメリカだけがお金のために、他国に「メンツ」を押し付けたのである。

 日本人は体裁やメンツ大好きな民族だから、アメリカの手法にまんまとはまり、自国の利益を犠牲にしてでも、民主主義の名の下でアメリカの代理人になり、第一線に立って中国と戦うわけだ。

 アメリカだけは特別。あの国はルールメイカーであるから、「メンツ」の定義ができるし、「お金」(米ドル)も刷りまくれるわけだ。だから、強い。それと戦う中国は独裁専制で体裁が悪く、「メンツ」の面ではアメリカに負けているので、「お金」の面に特化するしかない。

 これが今の世界の本質だ。こんな解説は、どこのメディアもしないし、できないだろう。

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