● 蚕食鯨呑
「蚕食鯨呑」という熟語は、「蚕食」と「鯨呑」という2つの全く異なる状況を表現している。「蚕食」とは、虫の蚕が桑の葉をじわじわと食い潰していくのに対して、「鯨呑」とは、巨大な鯨が弱小な魚をひと呑みにすることを表している。

パレスチナの地図ほど、この熟語をよく表せるものはほかにない。もともと「パレスチナ」という名の土地に異変が生じたのは、第一次世界大戦後だった。1946年にパレスチナへのユダヤ人の移住が始まり、1年後の1947年に国連総会でパレスチナ分割決議が採択され、1948年にイスラエルが建国するという一連の出来事を境に、イスラエルによる「蚕食」が始まる。
イスラエルの「蚕食」は、ユダヤ人は当初からパレスチナの地を一気に飲み込むほどの力を持っていなかったために取られた段階的なアプローチ、いわゆる「受動的蚕食」だった。1960年代から1970年代にかけて、イスラエルは高度な軍事技術の開発を始め、国防産業を育成し、後のハイテク産業の基盤となった。さらに、1980年代にはイスラエル政府が経済改革を推進し、市場経済を強化した。
ついに強国の地位に上り詰めたイスラエルは、パレスチナに対する「蚕食」を加速化させ、第2段階の「能動的蚕食」に取り掛かった。「能動的蚕食」は行動の不当性を隠蔽し、徐々に既成事実を積み上げていくという戦略に基づく。その裏には、ユダヤ系金融資本がウォール街に浸透し、米国のメディア、政治を牛耳る段階にまで至った。
そして、いよいよ「鯨呑」が始まる。今回のハマス襲撃事件がその発端と言えるかもしれない。ハマス殲滅という大義名分でパレスチナ人をガザ南部ないしエジプト領内(シナイ半島)に締め出し、ガザ地区を占領するか、傀儡政権を樹立するかとイスラエルが企んでいるだろう。非常によく練られた戦略であった。
ユダヤ人は、イスラエルにハイジャックされた。かつてのドイツ人がナチスにハイジャックされたように。対ハマス戦争に反対するユダヤ人もたくさんいる。聡明な彼らは本質を見抜いている。
現状はどうだろうか。イスラエルは1人のハマスを殺すために、数十人のガザ市民の命を奪う。家族や財産、土地を奪われたこれらの市民は自ずとハマスに加わる。ハマス殲滅は不可能だ。ハマスがテロだとすれば、イスラエルが作り出したテロだ。イスラエルの目的は、ジェノサイドだ。パレスチナ人に対するジェノサイドだ。ナチスの迫害を受けた者は今や、他者にナチスの手口を使っている。
もし、ナチスによるユダヤ人虐殺がイスラエルによるパレスチナ人虐殺の後に起こったとすれば、歴史の評価が異なるものとなろう。ツケは必ず回ってくる。
● ハマス擁護
ハマスはテロ組織ではない。――マレーシア政府のハマス擁護の立場は変わらない。在馬アメリカ大使館から、ハマスのテロ組織認定を求める正式通達を2度にわたり、マレーシア政府に突き付けた。在ワシントン・マレーシア大使も米国務省から呼び出され、厳重な注意を受けた。
しかし、アンワル首相は、いかなる強制にも屈しないと明言し、パレスチナ支援集会で、イスラエルを「この世界における野蛮の極み」と厳しく批判した。小国マレーシアの毅然とした姿勢に、敬意を表したい。私はマレーシア、パレスチナを支持する。ハマスはテロ組織ではないと認識している。
マハティール元首相は、ハマス指導者のイスマーイール・ハニーヤ氏とのビデオ会議でこう語った(10月27日付YouTube 削除される可能性あり)――。
「ガザであったのは、戦争ではなく、ジェノサイドだ。それがイスラエルの目的所在だ。ハマスはテロではない。パレスチナ人が自らの土地と自由を取り戻すための解放組織だ」
アッバスは、単なる傀儡政権にすぎない。ハマスが滅びれば、パレスチナも滅びる。だから、ハマスを支持しなければならない。ハマスはテロではない。
● 言論の自由はない
ニューヨーク・タイムズ紙の著名な記者で、全米でいくつもの賞を受賞しているジャズミン・ヒューズ氏は、イスラエルによるパレスチナ人虐殺を非難する公開書簡に署名し、同社のポリシーに違反したとして11月3日に、辞職した(事実上の解雇)。アメリカのメディアでは、「中立すなわち反ユダヤ、戦争双方の事実を報道することはすなわちハマス擁護」というルールがすでに定着した。メディアも国家も、そのスポンサーにしか正義が存在し得ず、それは「言論の自由」を凌駕する正義である。
● ハマス経済学
ハマスはイスラエルとの戦いに、驚くほどの量の武器弾薬を投入し、世界を驚かせている。武器はどこから来たのか。いくらイランが支援しているからといって、単一ルートでそこまではなかなか難しい。一部のメディアが話題にしているのは、ウクライナが最大の武器闇市を提供しているということだ。
闇市だから、情報ソースの確認ができないのは言うまでもない。ただ「仮説」としては十分にあり得る。むしろ可能性が高いと言わざるを得ない。中国系のチャンネルによれば、NATOがウクライナに供給した武器は、闇市では正規価格半値以下の格安価格で取引されている。しかも、デリバリー無料で秘密ルートで配送されるという。
ゼレンスキー政権は世界トップクラスの腐敗政権であり、NATOから支援された武器を闇市に流すことで大金持ちになった有力者は1人や2人だけではない。いくら武器を支援しても「足りない足りない」と要求する。そのカラクリをアメリカが知らないはずがない。しかし、一向に本気で問題にしない。それどころか、どんどん米国会で予算を通そうとする。
アメリカの軍需産業は空前の好況だ。その利益は政治に還流するのも自明の理だ。ロシアとウクライナの戦争で武器の闇市が繁盛し、今度はイスラエルとハマスの戦争で、需要がさらに拡大し、アメリカはイスラエルにも武器を供給する。アメリカ合衆国は建国250年、戦争をやっていないのは何年もないという、まさに戦争製造国家である。
中国の一帯一路はインフラ整備で他国を「債務の罠」に陥れ、インチキだというが、他国に「戦争の罠」に陥れるアメリカと比べれば、はるかに良心的ではないか。サラ金業者と殺人教唆・殺人者と同一次元で語ることはできまい。
● 親米反中
今の世界、もっとも悪質な国は、アメリカだ。中国ではない。この本質を見抜く力を持たない、「親米反中」の看板(符号)を掲げさえすれば、保守だという自惚れの保守もどき、似非保守、偽保守は、正直に言って無脳極まりない。彼たちは、保守とは何か、国益とは何か、といったコアな部分をまったく理解していないし、分析力もない。ただ「親米反中」という看板にしか反応しない。
このような人たちは、看板(符号)の下で集い、同調し合う「白左」の部類で、右折ウィンカーを出しながらも左折する車のようなもので、ポリコレにどっぷり浸かった左翼2.0版である。
特権階層とはほぼ無縁でそんな大金持ちでもない日本人の庶民は、「親米反中」と、しっかり刷り込まれているところをみると、やはり米国のプロパガンダがいかに大成功しているかを思い知らされる。そうした日本人は、脊髄反射的に、反応する。誰かが米国批判したらまだしも、中国を称賛しただけで、直ちに異端扱いで「反日」などのレッテルを張る。
私は聞きたいが、あらゆる「親米反中」がすべて、日本の国益に合致するのか?「親中反米」が日本の国益になるなら、国益を毀損してでも、親米反中に徹するのか?要するに、非論理的な無脳者たちだ。このような連中が民主主義の「主」になっている限り、アメリカは安心安泰だ。その連中がアメリカから骨髄まで搾取されていることに何ら自覚もしない。
そう、愚民である。民主主義であっても、愚民は愚民であり続け、生涯搾り取られる。




