「大多数の下層階級は、頭が悪い。上層階級が下層階級のことをよく理解しているが、下層階級が上層階級を理解もしていなければ、理解する気持ちもなく、ただひたすら嫉妬やルサンチマンを込めて、上層階級を憎悪している」と、私が言った。これに対して、SNSでこんなコメントが寄せられた――。
「日本の上層階級はフランス革命のような暴力革命を体験していない。(立花さんが言っている)上層階級が下層階級を理解しているとは、その理解は論理的、概念的なもので、身に沁みて理解していない。日本の上層階級は、さらなる上層である米国の外圧に歯が立たないわけで、しょせん上に対して弱く、米国支配層に対しては下層となるわけで、馬鹿馬鹿しい」
これに対して私はこう答えた――。
「まず、米国の上層階級に対する日本の上層階級の位置関係は、上下層ではなく、同層の上下位関係だ。この相対的下位は、日本だけでなく欧州の上層階級も同様で別に問題ではない。いわゆる同じ上層階級グループの中の親分子分関係にすぎない。日本の上層階級が馬鹿馬鹿しいと考える日本の下層階級は、ただの馬鹿でしかない。上層階級のことを理解していない証だ。
次に、日本の上層階級が暴力革命を体験していないのは、日本の下層階級が逆立ちしても暴力革命などできないからだ。対上層階級の嫌悪がどんなに蔓延しても、日本の下層階級は絶対に反抗しない、勤勉な馬鹿である。このメカニズムを日本の上層階級はよく理解しているのである。
さらに、『理解』の話だが、上層階級が下層階級を理解するというのは、下層に寄り添うとかそういう次元ではなく(理解と同情は別物)、まったく別の理解である。下層階級がいつまでも上層階級のために勤勉に労働し、従順に搾取される(持続的再生産)ために、下層階級の心理や行動、利害関係などを徹底的に理解する必要があって、そのための理解だ。つまり、奴隷が主人を理解しないが、主人は奴隷を理解していることだ」
「持続的再生産」の維持は、最も重要なことだ。とりわけ昨今、日本を含めてほとんどの先進国の上層階級にとって大きな課題の1つになっているのは、少子化である。奴隷の子も奴隷。奴隷が子供を産まないと、持続的再生産に支障が出る。
現代の下層階級・奴隷に対しては、消費搾取と労働搾取の二重搾取をやり過ぎて、奴隷はついに疲弊化し、結婚する意欲も、子育てする意欲もすっかり萎えてしまった。これは困ったものだ。搾取対象層の絶対数の減少が大問題になり、上層階級はあの手この手を使って、産め産めと騒ぎ出したわけだ。
もう1つの重要なことがある。日本人は、和を貴しと為す、規律・ルールを守ることで世界に誇る国民だと言われている。これを聞いてほとんどの日本人が胸を張って喜ぶ。これは、従順な奴隷に授与される勲章である。思考停止、ルール順守、指示命令への服従といった奴隷の要件をすべて満たしたことを表彰する、優秀奴隷賞なのである。
受賞された奴隷が不審に思わず、喜ぶのも、まさに奴隷根性の現れである。ルールについては、「なぜ、このルールが存在しているのか」「ルールのどこかおかしくないか」「ルールで最終的に利益を手にするのは誰か」といった疑問を持たないのが、奴隷制度の成功を意味する。
最後に、補足として、日本の上層階級の概況に触れてみたい。
上層階級の財務スペックは、収入ではなく、資産だ。野村総合研究所が定義する保有資産の階層分類によると、純金融資産1億円以上を保有する世帯は「富裕層」と定義される。2021年の調査では、1億円以上の資産を持つ「富裕層」と「超富裕層」を合わせると、148.5万世帯で全体の約2.8%だという。
1億円の基準は少々低いようにも思えるが、とりあえずそれで計算して、日本人の3%弱が該当する。そこで他のスペック要件を当ててフィルターをかけると、最終的に1%あたりに落ち着くだろう。1%の上層階級と99%の下層階級その他、どこの社会においてもほぼ共通する。